山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 此の世界のはじめもこんなであつたか


 
うすむらさきのもやのはれゆく
 
海をみろ
 
此のすきとほつた海の感覚
 
おお此の黎明
 
この世界のはじめもこんなであつたか
 
さざなみのうちよせるなぎさから
 
ひろぴろとした海にむかつて
                            て
一人のとしよつた漁夫がその掌をあはせてゐる
 
渚につけた千鳥のあしあともはつきりと
         おだや
けさ海は静穏かである