山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 握 手


 
どうしたといふのだ
 
そのみすぼらしいしほれやうは
 
そのげつそりと痩せたところはまるで根のない草のやうだ
 
おい兄弟
 
どうしたといふのだ
 
何はともあれ握手をもつてはじめることだ
 
さあその手をだしたまへ
 
しつかりと自分が握つてやる
 
大麦を刈りとつた畠に
             ヽ ヽ
これはいま秋そばを播きつけてきた手だ
 
どんなことでもしつてゐる手だ
 
どんなことにも耐へてきた手だ
 
土臭いとて顔を蹙めるな
 
此の手は君に確信を与へる
 
ぐつとつきだせ
 
もじもじするのは耻づべき行為だ
 
君もその手に力をこめて
 
そして自分の痛いといふほど
 
握りかへしてくれ
 
それでよろしい
         つつた
強く正しく直立て!