山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 秋のよろこびの詩


        な や
青竹が納屋の天井の梁にしばりつけられると
 
大きな摺臼は力強い手によつてひとりでに廻りはじめる
 
ごろごろと
 
その音はまるで海のやうだ
きん
金の穀物は乱暴にもその摺臼に投げこまれて
                わかいしゆ
そこでなかのいい若衆と娘つ子のひそひそばなしを聞かせられてゐる
 
ごろごろと
 
その音はまるで海のやうだ
 
ごろごろごろごろ
 
何といふいい音だらう
 
あちらでもこちらでもこんな音がするやうになると
 
お月様はまんまるくなるんだ
 
そしてもうひもじがるものもなくなつた
 
ああ収穫のよろこぴを
 
ごろごろごろごろ
 
世界のはてからはてまでつたへて
 
ごろごろごろごろ