山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 草の葉つぱの詩


 
晩秋の黄金色のひかりを浴びて
 
野獣の脊の毛のやうに荒荒しく簇生してゐる草の葉つぱ
 
一まいの草の葉つぱですら
 
人間などのもたない美しさをもつ
 
その草の葉つぱの上を
 
素足ではしつて行つたものがある
 
素足でその上をはしつて行つたものに
 
そよ風は何をささやいたか
 
こんなことにもおどろくほど
 
ああ人間の悩みは大きい
 
素足でその上をはしつて行つたものがあると
 
草の葉つぱが騒いでゐる