「庭の植え込みの中などで、しやがんで草をむしっていると、不 思議な性的の衝動を感じることがある」 と一人が言う。 「そう言えば、私はひとりで荒磯の岩陰などにいて、潮の香をか いでいる時に、やはりそういう気のすることがあるようだ」 ともう一人が言った。 ほうちやく この対話を開いた時に、私はなんだか非常に恐ろしい事実に逢著 したような気がした。 自然界と人間との間の関係には、まだわれわれの夢にも知らない ようなものが、いくらでもあるのではないか。 (大正九年十二月、渋柿)