・はじめに

 このサイトに来るような人なら、二次コンという言葉ぐらい聞いた事があるだろうし、自分自身が二次コンだと思っている人もいるかもしれない。二次コンの正式名称は二次元コンプレックス、略して二次コンという事になる。マザーコンプレックスが母親以外の女性を受け入れられないなのに対し、二次元コンプレックスは二次元以外の女性を受け入れられない、という含意がある。ここでいう二次元とは、三次元の異性(=現実の異性)に対する対比であり、つまりアニメやマンガやゲームの女性キャラクターを差している。

 つまり、異性キャラクターを好きになる事は出来ても、本物の同世代女性を全く受け付けないような性癖を持った男性は、二次コンというわけである。本来は、女性版二次元コンプレックスについても論じたいところだが、紙幅の都合と、やおい文化に対する研究が不足しまくっているので、女性の二次コンを除外し、あくまで当サイトらしく男性の二次コンだけを対象にする事とする。

 なお、この二次コンに関しては、やはり恋愛ゲームZEROさま(現Sociologic)において興味深い研究が既に為されている。この研究は当ページのそれと視点も方法論も異なる部分もあるが、しかし面白い事を色々書いてあるので一度ご覧頂きたい。また、恋愛障害者テストなるものやディメンジョンチェッカー(どれだけ二次コンかの度数を測定するテスト)もある為、自分自身がどの程度二次コンの傾向があるのかを確かめてみるのも一興だ。

 さて。今回は、二次元コンプレックスを以下のように分類し、それぞれについて原因と病態について考察を進めていく。最後には、治療についても触れよう。


先天的な二次コン(先天性)二次的な二次コン(後天性)
真性(本物異性NG)真性先天性二次コン真性二次性二次コン
偽性(本物異性OK)
偽性二次性二次コン




 1.真性先天性二次元コンプレックス

 こんな男性が、果たして世の中に何人ぐらい存在しているのだろうか?真性、つまり本物の異性に誘惑されたとて何も性的に感じないどころか、鬱陶しくさえ感じて、しかもそれが先天的!ここまでは、性欲に関連した突然変異のDNAを持った男性においてはまあまあいる事だろう。だが、そのDNA突然変異が本物の女性に対してではなく、アニメ絵の女性キャラだけに性欲を感じるような仕様になっている男性って本当にいるのだろうか?

 このような男性が世間にいると仮定した場合、先天的である以上、アニメ絵が世間に流通する前の時代にも潜在的にはいたことだろう。もちろんアニメ絵流通以前は二次元コンプレックスとみなされず、せいぜい分類不能の性的不能者と分類されていたのではなかろうか。中世ヨーロッパなら教会の絵を見て(;´Д`)ハアハアしたのがバレて火あぶりになっていたかもしれないし、近世日本なら浮世絵か何かを見て(;´Д`)ハアハアしていたのかもしれない。これらは二次元美少女キャラにはちょっと遠すぎるが、他に思いつくものがあまりない。

 しかし、神の悪戯でたまたま体質的にアニメ絵だけに特異的に性欲を感じるような先天異常者がいる可能性は(勿論肯定されてはいない反面)否定されておらず、少なくともそのようなくだらない事を真面目に研究した科学者は、まだいない。あくまで仮定のうえの存在に過ぎず、私も実物をはっきりと確認したわけではない。よしんばいたとしても、世間的には2と同じく認知されるだろう。はっきり言って、先天性/後天性を区別する方法は今後も開発されないだろうし、先天性真性二次元コンプレックスがいたとしても、極めて稀に違いない

 理論上は存在するであろうこの先天異常は、後天性真性二次元コンプレックスとの鑑別が困難なうえ、後天性以上に治しにくい事が予想される。そして真性コンプレックスの常として、リアル女性にリビドーが発動しない事に、本人が悩む事もあまり無い(周囲があれこれ言ってきて葛藤に陥る可能性は当然あって然るべきだが)。よって、医療の対象となったり議論の対象になったりする事は殆ど無いと推測される。



 2真性後天性二次元コンプレックス

 先天異常に起因する二次コンが希有と推測される以上、実際に真性二次コンと言える人の多くは後天的に発生したものと推測される。生まれた時からアニメに親しみ、反面、実物の異性との接触機会を取り上げられたり投げ捨てたりした生活を続け、とどめに美少女アニメ/ゲーム/マンガ等に埋没しまくった生活を続ければ発生するような気がするが、実際にどの因子が最もクリティカルなのかは私も分からないし、全ての萌えオタが真性二次コンになるとは到底思えない

 むしろ、性格面あるいは家庭内の問題や同性/異性との交友関係などに決定的な歪みやトラウマを抱えたか否かのほうが真性二次コンの発生にはクリティカルなんじゃないかという気がするが、これについてはまだはっきりした事が言いにくい。また、ホモセクシャル同様、内分泌学的変動が関与してくる可能性も否定できないが、残念ながら、体内のホルモンバランスが崩れた人で、『二次元萌え〜!三次元萎え〜!』になったなんていう症例報告は医学雑誌上では聞いたことが無い。結局、後天的に真性二次元コンプレックスに至る原因というのは、まだ分からないと言わざるを得ない。おそらくは、幾つかの原因が複合して“いわゆる発症”に至っているのだろう。そのなかには、先天性真性二次元コンプレックスほどではないにせよ、若干の遺伝的負因・突然変異遺伝子を含んでいる者がいるかもしれない。

 何が原因で後天的に真性二次コンが惹起されるのかは、結局よくわからない。ひょっとしたら、萌えキャラの強烈すぎる&都合の良すぎる刺激に曝され過ぎて、リアル女性が放つ性的シグナルに鈍感になってしまっているのかもしれないが、これもあくまで私の憶測に過ぎず、ここでは断定を避けておこう。しかし、私が確認している範囲では、例えば美少女ゲームやアニメではすごく興奮するくせに実写を見ると嫌になってしまう・どうしてもアニメ絵のキャラでしか興奮出来ないという症例は確かに確認されている。COMME CA DU NERD(閉鎖)のQ&Aでも、セックスの場でなかなか興奮できず、射精した時に脳内で妄想していたのがエヴァンゲリオンのアスカ(それも亀甲縛り)だったという凄まじいケースが掲載されていた。

 彼らに関して最重要視したいのは、「実物の異性による刺激や誘惑が加わったとて、それでは刺激としてちゃんと機能せず、アニメ絵の異性による刺激ではじめて性的興奮が発生する」という点である。ここが偽性二次元コンプレックスとの明確な相違点であり、異性との接触を補えば治るという方法が通用しないという点において深刻である。COMME CA DU NERDに掲載されていた、件のアスカ亀甲縛り萌え男もまた、脱オタに成功して女性と付き合えるようになったにも関わらず、二次元キャラでしか興奮しないという悩みを結局解消出来なかったのである。よくある“本物の女性と付き合えば治るよ”なんてアドバイスは、彼らには気休めにもならない。偽性、即ち代償性の二次元コンプレックスならば、異性とのコミュニケーションや性的接触をたっぷり経験して貰えれば、改善する事が期待されるのだが‥‥。

 なお、真性後天性二次元コンプレックスを特殊なフェティシズムと捉えて精神科的文献を漁ってみたが、フェティシズムを取り扱う専門家の文献を探してみても、二次コンという比較的歴史の浅いフェティシズムを扱ったものはどこにも見あたらなかった。今後の研究が待たれるが、フェティシズムという文脈で治療を試みたところで、あまり上手くいかない予感がする。手元のテキストブック(臨床精神医学/第八版)によると、代償性フェティシズムは、異性との接触が保たれる事で自然治癒する事が多く予後良好となっているが、真性のフェティシズムは予後不良となっている。精神療法(カウンセリング)が治療法になるらしいが、性の本質(=性同一性)に関係したフェティシズム系障害は、その人の人格に深く根ざしたものが多いため、治療が困難となると文献には記されている。ちなみにこの場合の予後不良というのは「難治」とほぼ同義である。 →DSM-IVではこうなってます

 しかし、この真性二次コン、本当に治さなければならない状態なのだろうか。真性二次コンでしかも自分の性癖に不満の無い人にとって、現在の日本はhappyな状態で、秋葉原などは見渡す限りの花畑であり、僅かな経済的支出さえあれば面倒な人間関係なく理想的な生活を満喫することが出来る。そうでなくても性愛や恋愛が無くとも死ぬわけではないし、他にも面白い事や価値のある事が沢山あるので、無理に治さなければならないと考える人は案外と少ないのかもしれない。電波男の本田氏も、『護身完成』という究極の二次元萌えな適応方法を提唱しているわけで、そのラインで生きていくのも悪くないように思える。そもそもが、これを『疾患』とみなすべきかというと私は『病気に含めないほうがいいんじゃないの?』という気がしてならないのだが。同性愛を病気とみなすのが精神医学界でも既にナンセンスとなっているのと同様、フェティシズムとしての二次元コンプレックスを疾患とみなすのはどうかと思う。

ただし、世襲の事やその他色々の事由によって子づくりしなければならない人とか、見栄の為に恋愛しなければならない人にとっては地獄のような状態なのは間違いなく、こうした人達を対象にした解決法の開発もまた急務だろう。やっぱり二次元キャラを妄想するしかないんでしょうか??


 3.偽性後天性二次元コンプレックス(代償性二次元コンプレックス)

 偽性同性愛という言葉がある。刑務所や山奥の男子校の中のように男しかいない環境において、本来は異性愛である男性が、異性愛の身代わりとして一時的に同性愛になる現象である。このような偽性同性愛は環境が代わって異性交遊が可能な状況になれば、殆どの場合は改善するのが特徴である。

 同様に、本来は通常の異性愛である男性が、コミケ三日目や田舎大学の漫研・アニ研のように男しかいない環境において異性愛の身代わりとして二次元コンプレックスとなる現象があるのではないだろうか?「あるのではないだろうか?」だと?生ぬるい!いるのだ。それも沢山!もうホントに沢山いる!

 物理的には今の日本、大抵の場所では男女比は殆ど同じと言える。しかし、性格・コミュニケーション能力・容姿・その他諸々の因子によって非物理的に異性との接触から隔離された人々が存在する。例えば、クラスのイケメンや女子達から侮蔑されて劣等感を醸成された人々――少なからぬオタク達や所謂喪男がこれに該当するのだが――などは、心理的問題や、それに付随するコミュニケーションスペック、社会的ニッチ(スクールカースト)などによって、同世代の異性との接触が著しく制限されている。彼らは共学の学校でも会社のオフィスでも目撃されるが、そのなかには幾らかの割合で“俺、二次元コンプレックスだから、アニメ絵には興味が持てても、リアルの女性には興味が持てないんだよ”と主張する群が存在する。

 事実、彼らはアニメ絵の異性キャラクターを愛好し、エロゲーや女の子のかわいいアニメなどで強い性衝動を覚えたりする。だが、本当にリアル異性に興味を持っていなければ女性に冷淡でもよかろうに、彼らは大抵、女性に滅法に弱い。もし本当に女性に何の興味もなければ、おじいちゃんやおばあちゃんを相手にする時と同様、妙な緊張感や妙なキョドりっぷりには至らない筈だと思うのだが…。久しぶりに同年代異性と会った場合は(真性二次コンであればきっと無関心であろうが)、大変丁寧に優しく振る舞ったり、普段は使わない敬語を使ってしまう人々。逆に、強い抵抗を示して逃げ出してしまう人々。実際のところ、彼らの多くは本当にアニメ絵にしか恋慕しないわけではない。彼らの大半は、異性に接触する機会や能力を持たないand持てなかったが故に、代償性に(つまりやむを得ず)偽性二次コンになったケースが多そうなのだ。こういった願望と発言とのギャップ故か、彼らの“自称二次コン”は自己欺瞞と誹られる事が少なくない。ことに、「リアル女はこれこれの理由で糞だけど、キャラクターは云々」というくだりを異性と付き合った事の無い偽性二次コンが発する場合、心の底を見透かされて小馬鹿にされるリスクが高い。

 また、近頃の美少女アニメ/マンガ/ゲームのなかには、想像を絶するほど男性読者に媚びて迎合している作品(ねぎマ!やエイケンなど)も存在し、しかもそれに群がり大喜びするオタクがちゃんと存在したりもしているので、偽性だった二次コンが美少女メディアへの過度の接触と過激化の果てに真性二次コンに進化してしまうリスクもあるかもしれない。アニメ絵のキャラは実際の本物の異性に比べて、それぞれの異性的要素が強調されデフォルメされたデータベース複合体なので(→セックス爆弾としての萌えキャラ)、一度アニメ絵キャラばかりに性的刺激を受ける生活をしていると、実際に本物の異性の刺激では物足りなくなる人がいるんじゃないかと私は危惧している。

 他のテキストとの繰り返しになるが、2005年現在の美少女ゲームオタク・マンガ美少女オタク達の世界では、リヤルはあり得ないような様々な要素・記号がてんこ盛りになった、特徴の強い二次元美少女達が人気を博している。ここに登場する二次元美少女達からは、「ろりぷに・処女崇拝・調教・男性に対する献身性と男性の絶対性・異様なスリーサイズ・妹・大きすぎる目・あり得ない髪型等々、現実異性ではみられにくい記号が多数抽出される。(参照→オタク達が好んで消費する、拒否を示さない萌えキャラ達)そしてこのような凄まじいデフォルメを受けたキャラクターしか愛せない二次コンのオタクが結構な頻度でみられるのだ。信じられないという人は、「シスタープリンセス」「妹」「ロリぷに」「幼女」などでググッて頂きたい(イメージ検索はダメージ大きいかもしれないので注意!)。二次コンオタク達はここまで進化してしまっているのだ。幾らオタクがリアルと脳内補完をはっきり区別出来るとはいえ、なかには性的嗜好だけは二次元/三次元の区別なく変質してしまった者も存在するかもしれない。現在の異性と二次コンオタクが好むようにチューニングを受けたアニメマンガキャラ達は、オタク自身に対する受容性の高さと性的魅力において、リアル女性を大きく引き離している。嗜好するキャラとリアル女性との差異が広がれば広がるほど、本物の異性を嗜好する確率は遠のくと推定される。

 なお、病膏肓に至った偽性二次コンは、一見真性二次コンと殆ど区別がつかないし、実際には区別する意味はあまり無いかもしれない。しかし、そういった人達を真性か偽性か鑑別するぎりぎりの方法がある。それは、16歳くらいの従順な美少女(処女性が大切らしいので勿論処女)が完全に意のままになる状況を本人に与えてみる事である。例えば無人島に彼と美少女を二人っきりにして、食料などは与えて二年ほど隔離してみるとか――偽性は嬉々として手を伸ばし、真性はそっぽを向くだろうという事だ。

 ただしこんな鑑別は人倫に背くものだし、ナンセンスとしか言いようがない。どちらにしても、リアル女性に最早何も感じなくなってしまった偽性二次コンは真性二次コンと同様に予後不良(=難治)だろうし、実質的にはよほどの幸運を掴まない限り治らないと推測される。またここでは大きく触れてはいないが、多くの偽性二次コンの中でも真性に接近していく群というのは、やはりそれなりの背景なり因果なりを持っているからこそ真性二次コンへと発展していく筈なわけで、萌えコンテンツの刺激性だけが一元的に偽性→真性を推進するわけではない事を言及しておく。



 【二次コンをもしも治したいと思うなら】

 二次コンを治していこうと思った場合、偽性か真性かによって対応方法と難治度は極端に違ってくるだろう。なお、以下のテキストでは先天性真性二次元コンプレックスは治療の対象に含んでいない。実在がはっきり確認できないうえに、いたとしても希有の存在だと思われるからだ。

1.後天性真性二次元コンプレックスのうち、過去のトラウマや家族との葛藤などが大きく関わっている場合

 まず真性二次コン――綺麗な異性に誘惑されても何とも思わない――否、思えなくなっている二次コンから挙げてみよう。彼らは異性に対して根本的に性的感情を抱かなくなっているので、魅力的な異性を単にあてがうだけでは決して改善することはなかろう。特に、二次元しか愛せなくなった理由が過去のトラウマであったり両親や家族関係と綿密に関わっている場合の治療はどうなるのか。精神療法(カウンセリング)をメインのお仕事にしている人達は、やっぱり分析とかやったりトラウマについて話し合ったりするのだろうか?少なくともフェティシズムの領域に関しては、精神科薬物療法は当然の事としても、精神療法的アプローチすら満足すべき治療効果をあげていないように思える。通常の精神医学的手法では、彼らの性癖の源に接近するのは非常に難しいのが現状である。もしも該当する論文が出てきたなら、是非アブストラクトだけでも当サイトで紹介してみたい。まあ、大昔の精神分析家は神経症圏のフェティシズム&リアル女性インポテンツを治していたと年代記には書かれているので、伝説の勇者の血を引いた精神分析家なら治せる、のかもしれない。

 ともかく、二次元メディアに触れすぎた果てに二次コンになったわけではない真性二次コンの場合、単にアニメやマンガをやめてコミュニケーションスペックでも向上させて異性と遊んでまわれば治るかというと、そうでない事だけは確かである。やはり、何かを解決するなり乗り越えるなりが必要のような気がするし、何が障害になっているのかを探すプロセスにおいてさえ当事者は非常にデリケートで難しい問題と向き合わなければならないと推測される。防衛機制の理屈から考えると、普段自分で意識しづらいような背景の問題・障害は、意識の照明下に持ってこられるとキツいからこそ意識されずに症状に転化されているという事になっている。となると、意識の照明下に引っ張ってくればキツかろうというというわけだ。まあこれも、あくまで精神科・心理学の年代記に書いてあることで、どこまできっちり該当しているのか、個人的には疑わしさを拭いきれないのですが…。

 しかし幸いなことに、こういったトラウマ・心理学的背景が起源の真性二次コンはおそらく稀だろうから、一人一人の病理は深くても、事例化する件数は少ないものと思われる(当事者にとっては何の救いにもならない話ですが)

 また、ひょっとしたら治せないまでも何とか結婚したり子供をつくったりすることは出来るかもしれない。もし交際相手や結婚相手が『テレビでアニメをたれ流しながらのえっち』とか『コスプレ上等』とか『エロゲーみたいなシチュ』に理解ある人なら、何とか脳内で二次元との置き換え作業をすることで、コトを進めることが可能かもしれない。当事者にも女性にも何かと辛いところが多々ありそうな交合だが、どうしても二次コンが治せない場合、次善の策として一考の価値があるかもしれない。ただ、そこまでできた配偶相手を探し出す&そんな配偶相手に選ばれるってのは、ある意味二次コンを治すのに匹敵するような高難度なのが難点だ。


 2.偽性後天性偽性二次元コンプレックスの場合

 そして偽性の二次コン。
 綺麗な女性が酔ったふりをしてもたれかかってきたら汗かいたり勃起したりできるほうの二次コンである。この治療は理論上至って簡単である。髪がピンクや青色の女の子の絵ばかり眺めていないで、異性と交遊する事!定義からして代償性なのだから話は早い。ただし異性との交遊をすることが実際には出来ない萌えオタさんが雲霞のように存在するのが今の秋葉原なので、理論はともかく実践するのは難しい。もし萌えオタ自身が女性への苦手意識を克服しないまま、冴えない服装と表情のまま乗り込んだところで、今時のこすからい女性にスペックを迅速に評価され、斬り捨て御免となってしまうのがオチだ。無為無策に女性に体当たりを繰り返すだけでは、結局女性に嫌われたり壺を買わされたりした経験などを重ねた挙げ句、「ディスプレイの中の咲耶だけが僕に微笑んでくれる!やっぱりディスプレイの中だけが僕の世界!」と益々三次元の異性を嫌う人も出てくる可能性が高い。極端に惨い体験を持ってしまった場合、それこそPTSDや鬱病に近い病態に至る者すら、出かねない(流石にそんなレベルの話は稀だと思うし、そうなる当人に多大な問題が潜んでいそうだが)

 このため、まず異性へのアクセスの困難さ加減をどうにかしない事にはにっちもさっちもいかないのが偽性二次コン治療の難しいところである。では、異性へのアクセスをどうにかするには何が良いのか?おそらく、本サイトや他サイトでも散々既出の脱オタ技術を用いるのが最も現実的ではないだろうか。脱オタは人を選ぶうえにハイコストで、しかも副作用も含んでいるが、単に見た目や異性ウケを改善していくだけではなく、自尊心の回復や対異性コンプレックスの克服などの恩恵も得られるかもしれない。女性という凄い種族は、(レーダーが故障していない限り)男性側がどんなに良い服を着ていたり羽振りが良かったりしても、自信の無さやコンプレックスや精神的タフネスなどを鋭く見抜いてしまい、あまりにひどい男性にはダメ出しをしてしまう傾向にある。よって、女性側のスクリーニングをくぐり抜けるスペックを身につけるうえでも、脱オタという(辛くて冒険満載の)“修業時代”を経ることは得るところが大きいと思われる。※1

 以前、「風俗行って来い」という単純な意見が聞かれた時期があったが、ネット上でもすぐさま「素人童貞」という新しい問題点が指摘されたように、根本的には偽性二次コンを治しきれない。それこそお金が無限にあれば、奴隷のような女の子に囲まれたハーレムを国外で作ることが出来るかもしれないが、そんな暴挙に出ることが出来る偽性二次コン者はそういない(そこまでの金と行動力を入手できる背景があれば、そもそも偽性二次コンなんぞにならなそうである)

 大体、金の力で風俗嬢と遊んだところで、当人がリアル世界で女性にアクセス出来るだけの何かが身に付くという事は殆ど何もない。劣等感や苦手意識は殆ど修正されないし、「童貞コンプレックス」が解消されたとしても、「素人童貞コンプレックス」がすぐさま襲いかかってくるときている。髪型・服装・話術・話題や、女性特有のコミュニケーション志向についての洞察も得ることが出来ず、所詮は「風俗はいけるがリアルな女性は今も苦手」に堕するのが関の山だ。二次元美少女にしか(;´Д`)ハアハア出来なかったオタクが、風俗嬢にしか(;´Д`)ハアハア出来なくなったとて、何の二次コン克服か!性欲を持て余して秋葉原を徘徊していた二次コン者が、目にくまをつくって風俗街をうろつくようになったとて、リアル女性達への萎縮的態度が持続するようでは問題は全く解決されていない。

 そうなると、偽性二次コンを何とか出来るかどうかの分水嶺は、脱オタが可能かどうかの分水嶺と殆ど同じになってくることだろう。遺伝的審美性や根性、“全く結果が出ないかもしれない事でも長期間挑戦出来る精神”、金、人脈、運なども含めた本人の潜在的リソースによって、治療予後はある程度予想できると思われる。お解りと思うが、こいつはなかなかシビアな宣告である。真性二次コンの治療予後に比べればかなり期待が持てるものの、悪条件が揃いすぎている偽性二次コンは、“脱オタという名の手術に耐えられない”“脱オタという手術の適応外”という事になってきそうなのだ。多分、条件が整ってない偽性二次コンが『脱オタという手術』を強行した場合、心か体か財布が耐えられずに手術台の上で憤死するのではないかと私は懸念する。末期癌患者には耐えられないな大手術を行って結果として寿命を縮めるのに似たような愚行だけは、二次コンの治療導入においても厳に慎むべきではないだろうか。それぐらいならやはり、本田氏の言う『護身完成』といきたいところである。



 【おわりに:まとめと注意事項】

 以上、二次元コンプレックスの分類を主として真性・偽性に焦点をあてて行ってみた。先天性であれ後天性であれ、真性二次元コンプレックスの治療は極めて困難で、おそらくは周囲の対応を変えていくか、生き方を変えていくしか無いケースが多いものと思われる。ただし、真性二次元コンプレックスで実際に頭を抱えている男性の割合は極めて少ないと考えられる。

 一方、偽性二次元コンプレックスは(萌えすぎて限りなく真性に近づいた者も含めて)数のうえでは圧倒的多数を占めており、女性への接近が不可能な状態・女性に対するコンプレックスなどが原因となって二次的に発生した状態と考えられる。しかし、彼らはリアル女性との性的接触や交際に対して葛藤こそあれ実際は熱望している事が殆どのため、何らかの方法で女性とのアクセスが可能となった瞬間、偽性二次元コンプレックスが解けてしまう。だが、偽性とはいえ二次元コンプレックスが進行すれば性的嗜好がねじ曲げられて、限りなく真性に近い二次コンに移行してしまうしまう可能性がある。また、原理的には治療が簡単でも実践上は困難が伴う為、現実的には脱オタに準じた難易度を覚悟しなければならない。このハードルをクリア出来ない偽性二次コンは、せいぜい風俗街を彷徨うだけの存在に堕ちてしまうかもしれない。

 このように、“治療”に難渋する二次元コンプレックスだが、ここまでテキストを読んだ人達に誤解無きよう、最後に一言だけ触れておきたい。確かに二次元コンプレックスは、真性/偽性を問わず治すのが難しい状態だし、これに苦しんでいる男性オタクはごまんといる。だが、このことは全ての二次コン者が治療すべきであるとか、変態として迫害の対象にしなければならないというものではない事を明言しておく。ただでさえ萌えオタ達に対する社会的スティグマは厳しい現在、二次元コンプレックス者がいっそう差別されるような事態は絶対にあってはならない。彼らが自ら望んで二次コンを脱したいなら、もちろん“治療”が望ましく、その為の方法論は出来るだけ充実している事が望ましい。拙いながらも、うちのサイトもその方法論を出来る限り提唱していきたい。だが、二次コン者の中にも現在の境遇に不満を持たずにいる者や十分に満足している者がいないわけではない。今のままで構わないと思っている二次コン者達にまで治療を強要するのは、あらゆる観点から見て間違っている。もしも彼らが二次コンで構わないと感じているならそれを止める権利は誰にも無い筈だし、二次コンである事を理由に差別されるのも間違っている。本テキストは二次元コンプレックスの実態を考察する為に制作されたテキストである事をここで再確認するとともに、本テキストを引用しての差別・偏見を扇動するような真似は絶対にやめて頂きたいと改めてお願いしておく。






 【※1得るところが大きいと思われる】

 余談になるが、世の中にはまだ、こうした修業時代の努力やプロセスを評価してくれる異性というのも稀にはいる。勿論、努力やプロセスがどの程度の効率性を持っていたのかも彼女達は評価しがちだが。とはいえ、現在の資源や目の前の結果ばかりを評価する女性が多いなか、このような女性がどれほどの価値を持つのかは、分かる人には十分すぎるほど分かる筈。脱オタする者も脱オタしない者も、こうした評価軸を備えた女性に出会った場合、(今の世だからこそ)格別の計らいでコミュニケーションを取ったほうがいいかもしれない。もしもあなたが他の人達よりも相対的に努力できる(そしてある程度の効率性までは保たれている)ならば、彼女を恋人にするかしないかはともかく、仲良くしておく事は有意義なことかもしれない。少なくとも、目の前の現金と目先の結果しか見えない愚女とコミュニケーションを取るよりは遙かに良いだろう。

 逆に言えば、こうした修行や努力に微塵の評価も示さない女性というのは、どのみちたかが知れているとも言える。女性側が評価を下せるという状況は、逆にこちらが向こうを評価する事も可能な状況といえる。目の前にいる女性がどのような評価軸を持っているのかは、逆に男性側が女性を評価する為の材料として無視できないファクターとしてきっちり評価してさしあげましょう

 ただし、女性側の評価が自分にとって不利なものだったら「あの女は糞女」と脊髄反射的に決めつけてしまうのは非常に危険である。彼女には偶々あなたの努力が見えていなかったのかもしれないし、あなたが努力を隠していたのがいけなかったのかもしれない。または、努力が明後日の方向を向いていてあまりにも見当違いで無能だったがために愛想を尽かされただけなのかもしれない。はたまた、何か特別な事情があって彼女はあなたを評価できないのかもしれない。努力を評価しないからと言って女性に怒りを振りまくのはあまり建設的とは言えない気がする。だが、少なくとも努力を評価してくれる女性というものは一目置いておく価値があると思われる。

 まー、「努力を評価する姿勢をみせる」という擬態を示してはいてもその実目先のリソースだけに着目している狡猾な女性はごまんといるので、結局は騙し合いの情報戦の果てにしか“この女性は努力を評価軸に据えている”とは評定しにくい。このため、男女間の情報戦にある程度習熟しなければ、こうした極めて価値の高い女性を発掘する確率が低下してしまうという難点もある。