ちょっと
DSM-IV(アメリカ精神医学会診断基準)を参考にして、フェティシズムとしての真性二次元コンプレックスを見てみよう。参照項目は性嗜好異常
(Paraphilias)の項目である。まず性嗜好異常を診断する際に重要な前提として、
「
その空想、性的衝動、または行動が臨床的に著しい苦痛または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている」
「
少なくとも6ヶ月はその嗜好による行動が続いている」
に注目しなければならない。
これを満たしていないならば、死体愛も小児愛もマゾヒズムも疾患単位としてフェティシズムとは取り扱わない。例えば死体愛好者も、社会的に問題を起こさず自分の性癖に悩んだり苦しんだりせず、且つその事で誰も困っていないなら、それは確かに変わっているかもしれないが「君は風変わりな嗜好だね」で終わってしまうのだ。下着フェチであっても、下着泥棒などすればまずいが、
誰にも一切迷惑をかけず本人は嬉々として全く悩まず、みんな幸せに暮らしているなら診断基準を満たさない(DSMって、良くも悪くもこういう部分が多い)。逆に言えば、本人or/and周囲が困ったり悩んでいたり、本人or/and社会にとって何らかの障害をもたらす性嗜好異常となると、精神疾患とみなして相談の対象に出来るらしい
(どうやって治すのかはとりあえず置いておくとして)。
DSM-IVでは、特に8つの性嗜好異常をわざわざ項目を設けて取り上げてあり、それ以外については「その他」の性嗜好異常にしてある。その8つとは、
・本人または周囲が困っている露出症
見知らぬ人に自分の性器を露出する事に関する、強烈な性的に興奮する空想・性的衝動・または行動が反復する。三面記事によく登場している。
・本人または周囲が困っているモノ対象フェティシズム
生命のない対象物
(女性の着衣などに限定されない)の使用に関する、強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する。2chのフェチ板をみていると、世の中には凡人の想像を絶するフェティシズムも存在するようだ。
・本人または周囲が困っている窃触症(痴漢など)
同意していない人にさわったりこすりつけたりすることに関する、強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する。これも三面記事を賑わす事がある。
・本人または周囲が困っている小児性愛
思春期前の一人または複数の小児
(通常13歳以下)との性行為に関する、強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復し、かつ自分自身は16歳以上である。ネット世界には案外沢山いるような‥‥。
・本人または周囲が困っている性的マゾヒズム
辱められる、打たれる、縛られる、またはそれ以外の苦痛を受ける
(現実的で、擬似的ではない)事に関する、強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する。リスクの高いフェティシズムかもしれない。
・本人または周囲が困っている性的サディズム
被害者に心理的または身体的苦痛
(陵辱を含む)を与えて自分を性的に興奮させる
(現実的で、擬似的ではない)という関する、強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する。これもリスクが高そうだ。
・本人または周囲が困っている服装倒錯的フェティシズム
異性愛の男性が、異性の服装をすることに関する、強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する。要は女装。女性の男装は指さないというあたり、私は不公平感を感じずにはいられないがそれは別の話。
・本人または周囲が困っている窃視症(のぞき)
警戒していない人の裸、衣服を脱ぐ行為または性行為を行っているのを見る行為に関する、強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する。田代なんかはこれに該当してしまうのだろう。治ってないんだから。
以上八つ以外の異常性嗜好については、「特定不能の性嗜好異常」と分類されており、例として電話わいせつ、死体愛、獣愛、浣腸愛などが記載されている。だが、
もちろんこれらだけには限らないとなっている。それならば!二次元コンプレックスのうち、本人または周囲が困っている場合は、DSM-IV性嗜好異常に該当するのではないか。該当したからといって賞が貰えるわけではないので喜んでもらっても困るが、精神科に行って医者に困った顔をされる事ぐらいは出来るかもしれない。
念のため、治療と予後についても調べてみたが…。
「性嗜好異常については精神療法を主に行うが、このように性の本質に関係した障害はその人の人格に深く根ざしたものが多く、精神療法的接近が困難な場合が多く、予後も不良である。」との困った回答を現代臨床精神医学ver.7から頂いた。平たく言えば、「
本人の人格の深いところから来る障害だからカウンセリングで立ち向かうのが難しく、治すのがとても難しい」という事だ。精神科医が患者に関わる時間は
(数万円取るような自由診療の場合を除き)一ヶ月あたりたかだか数分〜数十分なので、端から期待するのが間違いのような気がするので、結局は精神科に行って何とかなるという感じではなさそうである。あくまで分類は可能、だが治療は難しいといった所か。
なお、念のため触れておくが、これら診断基準を満たしているからと言って責任能力が問われないわけではない点に注意。責任能力が問われないのは今日日超重症の統合失調症や超重症の躁鬱病ぐらいなもので、悪いことをやれば刑務所に行くのは変わらない。そもそもこれらの異常嗜好者は、特定の嗜好が異常なほかはとりたてて異常がみつからない事が殆どといわれている。先にも触れたが、疾患として取り扱うべきか、極めて微妙な群である。