シロクマ注:
自分自身のメンタリティを補強してくれるツールとしても、友達と繋がったり共通の話題・価値観を持つにしても、Jさんにはおそらくオタク趣味しか残っていなかったのでしょう。もちろん、Jさんには流行のJ-POPを聞いてみる権利もありますし、部活動で認めてもらう権利もあったでしょう。ですが、そういった
クラス内マジョリティが既にパイを確保している状況下でJさんが頑張ってみたところで、“ヒエラルキーのなかの奴隷”的ポジションを免れることが出来ません。もし、Jさんが十分なリソースを持っていてクラス内で受け容れられていたなら、果たしてオタク趣味に足を染めていたのでしょうか?オタクグループに入っていったのでしょうか?このJさんの生育歴をみる限り、暴れ始めた思春期心性をなだめる方法はオタクコンテンツ以外にはほぼあり得なかったのではないかと思います。オタク趣味界隈はしばしば去勢集団と揶揄されますし、事実その通りなわけですが、どんなにスペックが低くてもどんなにリソースが乏しかろうと
(思春期男子特有の)ヒエラルキーにあまり目くじらを立てず受け容れてくれるのがオタク界隈です。自意識の傷つきに喘ぐJさんが、我を忘れてコンテンツにむしゃぶりつく姿が目に浮かぶようです。
ですが、高校に進学してJさんはオタクグループ叩きに遭遇することになります。一学期にクラス内に受け容れられていたのは、実はJさん自身に何らかのコミュニケーション上のリソースがあったからかもしれませんし、「誰が王様で誰が騎士で誰が奴隷なのか」を探り合う、まだ比較的フラットな状況だったからかもしれません。夏休みが明けた時、Jさんは「オタクグループ」というレッテルを貼り付けられ、彼自身も「臭い」と宣告されてしまったわけです。中学時代の記載から察するに、身だしなみや服装などにも問題があったに違いなく、「単にオタクグループだったから陰口を言われただけ」とは限らないでしょう。
転機は、痛いオタクの姿で訪れたようですね。
めきめきオタク界隈にのめり込んでいったJさんですが、「アニメ・声優養成学校」と進路調査に書いちゃうような痛いオタクに出会うことで目を醒まします。おそらく
同族嫌悪が働いたからこそ、目覚めやすかったのでしょう。現実検討識を喪失するほどオタクコンテンツに依存した、重度のオタクに出会ったのは、Jさんにとって大変幸運なことだったと思います。そしてJさんは脱オタ道へと突き進んでいくことになるのです。
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