・Jさんの大学時代以降・脱オタの道
高校を卒業した私は、地元の大学へ進学した。語学の授業で一緒になった男(Aとしておこう)に話しかけられて仲良くなった。
彼は高校時代にはいなかったタイプの男だった。オシャレもそこそこで、女の子ともすぐに馴染める、顔もイケメンの部類に入るヤツだった。彼はオタクみたいな俺を馬鹿にすることはなかった。それからは、たくさんの友達が出来た。皆、タイプは違ったが優しかった。
私はといえば、ファッションセンスも向上することは無く、自分でカッコイイと思った服を買って自己満足していた。髪の毛は床屋で切ってもらっていたが、眉毛は整えるようになった。語学のクラスで飲み会を開いたとき、女の子たちもいたが、自分からはほとんど喋れず、一人で飲んでいた。
転機が訪れたのは、2年になって冬も近づいた頃、Aが、「女の子を紹介してやる」と言ってきてからである。冗談だと思った私は、Aに何故自分に紹介するのか聞いた。「お前が一番いいと思ったからだよ」と、Aは言った。素直に嬉しかった。
数日後、Aからその女の子のメールアドレスを聞き、メールを始めた。
女の子とのメールは初めてだった私はドキドキしながらメールのやり取りを続けた。彼女は、医療系の仕事に就くための学校にに通っていた。忙しいらしく、メールは夜中に長文で返ってきて、それを長文で返信してまた次の日の夜中とかいったように、2日で一往復のペースでやり取りした。
メールだけでのやりとりが4ヶ月程続いた時に、彼女のほうから「会いませんか?」と、メールが来た。私は驚きでしばらく震えが止まらなかった。彼女がテストだったため、1ヶ月待ってまた連絡することにした。もう不安と期待で平常心では居られなかった。
しかし、会う日が近づくにつれて恐怖心が増してきて結局連絡するのを止めてしまった。Aに謝り、紹介は流れた。彼は笑って許してくれた。申し訳なさでいっぱいだった。
私は、それから自分に自信をつけるにはどうしたらいいか考えた。出た結論は「清潔な格好はもちろん、見られて恥ずかしくない格好をしよう」だった。それからはファッション誌を買った。バイト代はほとんど服や靴や髪などのケア用品に使うようになった。