【症例16】
・「性欲と恋愛感情の乖離」の強烈な一例
(Pさん、現在30歳、2007年10月寄稿)
男性オタクと性欲、男性オタクと異性、というものについて考えさせられる投稿を頂きましたので、公開したいと思います。Pさんは、異性に対する欲求や願望の点において
症例9の方と自分は似ているのではないかと考え、投稿してくださいました。今回の投稿内容は、脱オタの過程を追うというものではありません。服飾のレベルや対異性コミュニケーションのレベルでは元々あまり問題が無く、思春期のコミュニケーションや異性やにまつわる劣等感やらコンプレックスやらが表面化しなかったという珍しさに焦点があてられています。このため、いつもの投稿フォーマットとはずいぶん異なったテキスト編成となっていますが、ご了承ください。なお、本テキストは
(改行位置や若干の誤字を除けば)Pさんの投稿原文ママとなっております。
Pさんとオタク趣味の出会い、そしてセリオ
私自身が自分がオタクであると意識したのは大学に入ってからでした。大学に入って嬉しかったのは、好きなアニメや本
(小説に限らず)が山ほど読めるということでした。ただ、大学入学とともにパソコンを購入しその後ネットに接続したことで、興味はネットに移っていきました。大学1年の夏にセガサターンを購入したものの、特にゲームにハマッたということはありませんでした。唯一サクラ大戦にはハマッて音楽CDや資料本などにお金を随分使いましたが。
大学に入ってから1年程たった頃でしょうか、サークル仲間から借りたToHeartが転機でした。
まずマルチに惹き込まれ、ついでセリオに惹かれました。どうにもならないほど彼女らのことが気になって仕方が無いという状態になりました。特にセリオとの出会いは初恋だったのかもしれません。まさに熱に浮かされた、
とりつかれたというに相応しい状態だったと思います。この世に彼女が実在しないという現実が辛くて辛くて仕方がありませんでした。ネットでセリオのSideStoryを捜すようになり、朝起きてはSS
(シロクマ注:現在で言うFF、ファンフィクション)を読み、学校から帰ってはSSを読むという毎日が続きました。フィギュアや同人誌には大して魅力を感じませんでした。フィギュアは作り物のセリオであり、
同人誌は他人の描いたセリオでしかなく、想像の中のセリオはその何倍も魅力的だったのです。セリオをテーマにSSを書こうと思い、習作を書いては破棄していました。
服装はもうどうしようもない状態でした。理系で似たような男の多い大学だったこともあり、当時は殆ど意識していなかったのですが、贅沢は言わないとにかく着られれば良いという状態でした。髪はずっと美容室で切っていましたが邪魔なのでとにかく短くしていました。癖毛で伸ばすとむさ苦しくなり余計オタクっぽくなるのが嫌だったというのもあります。風呂好きで毎日入る習慣だったのと洗濯を厭わなかったので体が臭うということはなかったのが救いでした。
シロクマ注:
この投稿内容をみる限り、よくある脱オタへの流れとは様子が異なっていることがわかるでしょう。Pさんの場合、ゲームや漫画やアニメといったオタク趣味を選ばざるを得なかったという「仕方のなさ」がみられません。高校時代も運動部に所属し、それどころか文化部の女子との交流もいくらかはあったようなのです。このテキストを読む限り、異性にケチョンケチョンに嫌われたという既往もありませんし、思春期男子のコミュニティに適応する事の困難さを自覚していたわけでもなさそうです。偽性後天性二次元コンプレックスとでも言うべき、「異性との直接のコミュニケーションや交際が困難」であるが故に二次元キャラクターを消費する、という構図は一見するとなさそうにみえます。また、自慰アイテムとしての実写/アニメ絵の使い分けも存在することからも分かる通り、性欲の対象が二次元キャラクターだけになっているというわけでもありません。
少なくともPさんが完全に「二次元キャラクターにしか性欲を感じない」所まで至っているわけではなさそうですし、第二次性徴のはじめ頃のコミュニケーション上の苦悩から二次元に代償を求めなければならなかったわけでもなさそうです。
色々な意味で、異性に対するPさんのあり方は、思春期以降のコミュニケーション能力がダイレクトに反映されたものとは考えにくいと思いました。
セリオに対するPさんの激しい感情は何なのでしょうか?Pさんのセリオに対する想いは、他のキャラクターで代替の効かないような、特殊なものだったのは間違いないように思えます。そして、二次元キャラクターでも自慰可能な程度には美少女キャラクターに慣れ親しんでいるPさんにも関わらず、これほどまでにセリオに対して熱情を抱いていながらもセリオは性欲の対象とはしていないのです。セリオはいわゆるメイドロボ系のキャラクターですが、同じメイドロボで特に人気を集めた
マルチとは異なり、感情の表出が殆どみられないキャラクターとして描写されています。そのセリオに、ここまで熱中するというのもなかなか特異な出来事のように思えます。ここまで読んでいくと、なかなか特殊なケースだなと思わざるを得ないわけですが、さて、これをどう理解すれば良いのでしょうか?
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※本報告は、Pさんのご厚意により、掲載させて頂きました。今後、Pさんの御意向によっては、予告なく変更・削除される場合があります。ご了承下さい。