【興味深いやりとり。電波男対精神医学？】(2005.09/08)
オタクの社会適応技術について考察したり、萌えについて考察したり
している手前、こんな小さなサイトにも様々のお便りやリンクが届く事が
ある。これまで様々な御手紙やリンクを頂いてきたが、今回、こちらの
萌え関連テキストに対して、なんと200万ヒット超の大きなサイトの方が
リンクを貼って下さった。好き好きおにいちゃんの、kagamiさんである。
かつてあの暗黒kanonを運営していた方なので、萌え界隈ではご存じ
の方も多いことだろう。しかもこの方、随分精神医学関連の書籍もお読み
のようで、例えばこのゲーム評のように、かなり詳しい説明を行っている。
哲学書は勿論、精神医学に関する書籍も私より遙かに沢山読破している
事が伺われ、氏の読書量の豊富さに驚くばかりである。
このkagamiさんとの今回のやりとりは、このサイトをやっている中で今まで
あまり経験した事のないタイプのもので、私は特別な印象を受けた。この
やりとりをご覧になった方は、私に限らず、色々な事を考えたり感じたり
出来るかもしれない、こういうやりとりは珍しくて貴重なものかもしれないと
感じた私は、ここに、そのやりとりの記録を残し、閲覧が可能な形にして
おこうと考えた次第である。
１．シロクマから。
脳内補完における、萌えキャラとオタクとの一方向的関係 (関連は→こちら)
２．続いて、kagamiさんから。
電波男対精神医学 -英雄-
もういっちょ。
続・電波男対精神医学 -羊飼いの罠-
これらのテキストにびっくりした私は、色々訊いてみたい事ができた
ので、メールを送ってみることにした。以下がその内容だ(原文ママ)。
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From: "シロクマ" <c6enero@hotmail.com> To: ---------@hotmail.com Subject: ？Σ(゜Д゜；≡；゜Д゜)？by シロクマ Date: Thu, 08 Sep 2005 00:00:49 +0900 kagamiさん、こんばんは。シロクマです。 素敵なご批判、ありがとうございました。 フーコー、ヘルダーリン、ニーチェ、ハイデガー...。 私よりも遙かに哲学に造詣の深い方のようですね。 そのような高い知性をお持ちの方から斯くの如き批判を頂き、怖れ 戦いております。 ところで私は本田氏の実際のあられもない萌えキャラに対する行動と、 書籍などにおける萌えに関する純愛主義的発現のギャップには卑怯さを 感じる人間であり、そこのところはきっちり批判していきたいという思いが 強いです(過去、本田氏は私と同じく惣流アスカを大変愛した同志でした。 ですが、本田氏はこともあろうか.....嗚呼、アスカは、きっと泣いてます)。 １．しかし私って、件のテキストのどこで本田氏を「精神医学の方法論を 用いて」批判したんでしょうかね？どうも自覚がないんですよ。私は彼の 実際の萌えキャラとの付き合い方と、電波男に書いてあるきれいごと(と、 にもかかわらず自分本位な女共には鉄槌)とのギャップに関する卑怯な 姿勢については弾劾してるつもりです。 ですが、自己愛的営みと考えた萌えについては、全く批判しているつもり はありませんし、私のサイトの萌え特集の予定を見て頂ければわかると 思うんですが、むしろこれから萌えの長所や適応的意義について論じて いこうと考えていたんですよ。何故、これほどまで手厳しく断罪されて 「対立の構図」をぶちあげられてしまったのか、困惑しております。 ２．それと、精神医学の標準精神という概念で萌えを叩く、といった主旨 もどうなんでしょうね？自己愛的営みである、という私の発言を、kagamiさん は「自己愛的営み→異常」とか、「自己愛的営み→悪」とお思いに なられたんでしょうか？そうでなければ、私がどこをどう萌えを「異常」とか 「悪」とカテゴライズしたのかよく分からないのです。少なくとも私はそれらを 悪だと思いませんし、むしろ自己愛的営みでもいいじゃないかと常々考え ている身です。何か、私のテキストの修辞上の問題などがあったの でしたら、ご教授頂きたいと思います。 確かに、精神医学の標準精神という概念で萌えを叩くのは、好ましい ことではないでしょう。しかし、自己愛パーソナリティの権威である コフートは、このような自己愛的営みは健康な人においてもある程度は 必要なものであり、なおかつ「完全なる対象愛というものは存在せず、 どういう場合であれ、多かれ少なかれ対象を通じての自己愛的な営みが 含まれる」というような主旨の発言をしています。コフートの着眼を 自己愛というキーワードにおいて重視したい私としては、自己愛的営み というのは誰にでもあるもので、一定の条件が揃えばそれなりきに発生 するものだと思っています。萌えというのが自己愛的営みだとしても、 少なくともそれは異常なものではなく、悪でもないと思いますし、そういう 誤解を与えないよう私なりに努力をしてみたつもりです。それでもkagami さんには私が精神医学という鋳型を用いて萌えを糾弾したように見えた のでしょうか？あなたほどの方が、よもや電波男への批判に引きずられて 感情的な反応を起こしたとも思えません。どうか、これも教えて頂きたい と思います。 私はちんけな精神科医で、あなたよりも遙かに読書量は少ないですし、 フーコーやラカンは難しすぎてわかりません。自己愛についての議論も 防衛機制についての議論も、臨床畑と関連の強い分野しか引用できない 身には少々荷が勝ちすぎている事を承知で展開しているとは思って います。ですが、このたびのkagamiさんのご指摘は、なにがなんだか さっぱりわからないほどのものでした。はてなのほうにこのメールの主旨 を書き込もうと思ったら、私は書き込みを許されませんでした。そこで、 メールさせて頂いた次第です。ご指導・ご指摘のほど宜しくお願い いたします。 |
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kagami itirou <-----------@hotmail.com> 送信日時 : 2005年9月8日 9:33:08 宛先 : c6enero@hotmail.com 件名 : RE: ？Σ(゜Д゜；≡；゜Д゜)？by シロクマ | | | 受信トレイ シロクマ様 kagamiと申します。ご丁寧なメールありがとうございます。 私は、電波男だけでなく、本田透氏のしろはたは昔から 読ませて頂いておりますが、彼の述べていること、純愛嗜好、 三次元での純愛の困難と、二次元における純愛の実践は 至極一貫しており、全くその点で問題ないと思います。 アスカについては、何があったか存じませんので、 何のことを仰られているのか、意味が分かりませんが…。 精神医学における操作対象としての「自己愛」については、 「自己愛」なる概念は世の中の現象の一部を精神科医が 取りだし恣意的に規定することで、本来は概念化できない 現象を概念化して支配する為の技術と私は認識しております。 私は『健康』なる指針を精神科医が恣意的に決定するなど ということは全く認めておりませんので、コフートが何を 云おうが、それはコフートなる人物固有の意見であり、それ以上 の価値を見出しておりません。もしコフートの意見に、私が見るべき ものを見出せば、それを取り入れて消化し、私の意見にする、 もしそうでないならば、それはそういう意見もあるのだと頭に 止めておくだけになるでしょう。私は精神医学の権威なるもの に医学言説のヴェールを被った社会政治学の実践と 形而上学的な支配への意志しか基本的に見出していないので、 それらの権威を私に持ち出されても無駄かと思います。 シロクマ様は、精神科医の方のようですが、精神医学の言説を 『客観的な真理』だとは思わない方がよろしいかと思います。 『真理』とは常に、『何か（実体）』ではなく、『それを語る者は何者か（動機）』 ということ（主観的真理）であり、政治的実践の一つの方法に過ぎません。 そこには正しさはなく、ただ、信じることがあるだけですし、 信仰とは、自らが信じるものであって、それを強制的に他者に 押しつけるような行ないを、私は私の信ずる真理において、 『邪悪』と呼んでおります。あくまで真理は呼びかけであるべきで、 強制するものではないのだと私は信じております。 |