3-14.上手な病院のかかり方
(2002.02.11)
最初に、結論を言いますと、
「大学病院・大病院は難病の治療や高度医療での治療が優先で、
診断はまずホームドクターに受けましょう。」ということです。
ネットサーフィンは楽しいものです。
意外な発見や、微笑ましいものやいかがわしいものまで、いろいろ
最近見たのが、病気で苦しんでる方が、みんなで話して情報交換を
しましょう、という意図で作られたサイトでした。
一見とても好ましく思えたのですが、内容をよく読ませて頂いたら
なんだか、とても好ましく無い、と思うようになりました。
今日は自分にとっても、きっと皆さんにとっても、大切なことだと
思いますし、日本の医療制度の根源的問題なので、そのことを整理
して、書きます。
まず、お尋ねしたサイトの概要をお知らせします。
或る病気で、生活設計が狂ってしまったほど、手術やら治療期間の
長さとか、医療費のことも、それはお気の毒なケースでした。
今はかなり改善したようですが、必要なかった手術や切除した臓器
費やしたお金や、人生の貴重な時間は、戻ってきません。
人間の身体に無駄なものは無いので、切除により一生、不自由です
この方のURLなどは、サイトの批判的なことも含んでしまうので
書きませんけれど、ぼくがお伝えしたいことは伝わると思います。
その方は、最初は地域の大きな病院を、ついで大学病院をたくさん
転院されました。
誰でも、苦痛が続き、原因がはっきりしなければ同じようなことを
されると思ったので、これは書かずにはいられないと思いました。
例えば、地方に住んでいらっしゃる方が、小さな先生ひとりだけの
医院の診断と、大学病院やそれと同じくらい大きな病院で、高額な
検査機器を駆使して得られた診断では、どちらをより強く信頼する
でしょうか?
実は、ここに大きな「落とし穴」があるのです。
僕は医師ではありません、けれど日本中の医療関係者の誰もが僕の
お伝えするようなことを言っていません。
だから信じて頂けないかもしれません、しかしこのホームページも
日本人として珍しい、変わった発想ですが、聴いて頂いている方も
少なくありません。
仕事の合い間に運営しているHPですが、お知り合いも増えました
熱心に読んでくださる方も少なくないですしメールを下さる方も、
けっこういらっしゃいます。
すみません、CMでしたね、、お話しを戻します。
「大学病院・大病院は難病の治療や高度医療での治療が優先で、
診断はまずホームドクターに受けましょう。」です。
医者になるには6年間勉強して、国家試験に合格し、認定医になりた
ければ指定された病院で前期4年後期3年の研修を受けます。
研修機関に認定されているのは、大学病院や大病院です。
教える側は、学会での発表や研究が優先されがちになります。
そこで思わぬ落し穴があります。
専門化すればする程、視野は狭くなるのです。
ぼくがお尋ねしたサイト主催者の場合を見ますと、大学病院を転々と
してセカンド・オピニオンどころか、サード越してホームインした後
又ファーストに走り出した、そんな感じです。
これほど医療に懐疑的では誰の診断も言葉も信じられないでしょう。
さて「落し穴」ですが、解かり易く言いますと、風邪で整形外科に
受診しても、内科に行きなさい、とは余程重篤でなければ言いません。
同じ症状でも、内科と整形外科では違う診断をするでしょう。
正確に言えば、最初に疑う疾病は違います。
医学部は専門科目の勉強は最後の2年間だけですから、風邪くらいなら
どんな医者でも処方できます。
そもそも感冒という病気はないのですから、解熱・鎮痛・消炎剤を
処方しておけば、自然治癒力で回復するのです。
稀に肺炎や合併症で危険になって初めて、
内科にかかるべきなんですよ!と言われるのです。
大学病院は難しい疾病の治療法の研究と実験をしています。
一般病院で、できない難病や重篤な患者の治療を目的としています。
つまり治療です。
ところが多くの方は、有名な大病院で診断を求めてしまうのです。
一般的な病院と、大学病院を比較してみて下さい。
一般的な病院では、内科、外科、と何か少しでしょう。
大学病院では、内科だけでも、循環器系、呼吸器系、消化器系、
糖尿病(内分泌・代謝)、腎臓、血液・免疫、神経系、、、
しかしこれらは治療の為です、診断には向きません。
大学病院の医師は専門科目を学部の後期課程2年間勉強しただけで
その後は更に細分化された専門分野を日夜研究して博士号をとりたい
無給助手から有給に、講師に助教授に教授に、あわよくば学部長に
学長にと、研究を続けます。
それと平行して、天下り的に一般病院や大病院の科長部長、院長を
目指して研究しています。
つまり、専門分野以外はあまり知らないのです。
ところで疾病の診断はとても難しい面もありますが、日頃から患者を
知っている医師なら、急な症状が出ても背景や生まれ育った環境まで
視野にいれて、適確な診断が出来る傾向があります。
西洋医学の欠点でもありますが、evidence を優先するあまりに、
個体差を見失いがちです。
欧州では、ホームドクター制度が充実しています。
医師と言えども普通の人間です。
名探偵ホームズやポアロのように、上手くいくわけではないのです
又、逆にそんなに、難事件=診断が難しい疾病、は少ないのです。
人間関係の基本は信頼です。
プラセボー効果も、実際にあるほどです。
日本文化は古来から島国の為もあって、批判や反論に敵意を抱きがちです。
本来、自由や創造性には、外部からのいろんな影響が必要なほど大切です。
このサイトの主催者は医学的な知識を独学で調べられたようですが
とても危険なこともあることを感じました。
専門に医学を専攻してすら、誤診とも思えるほどの診断の違いが
あります。
内科と整形外科では同じ症状に対して違う診断をします。
"Informed consent" は大切ですが、間違うと危険です。
医者の中にはお金儲けの為に正常な人を手術する医者もいます。
(犯罪です、ニュースでご存知でしょう。1例を最後に付記しました)
医療関係者のフォーラムやサイトは沢山あります。
指導者が間違うと宗教ですら暴走します。
その方の体験談、症状や治療過程は真に迫っていて、読んでいて
自分も病気なのではないか、そんな錯覚を覚えてしまいそうでした。
悪戯に心配を煽り増やしているように思えて心配でした。
自分の身体は自分でしか守れません。
悪戯に自分の身体を傷つけず、セカンド・オピニオンを上手に入手
して、最適な診断と治療を、できるだけ多くの方が受けられることを
祈ります。
具体的な所見が無く、症状が続く場合は、「心身症」や
「自律神経失調症」等を考慮されても、いいと思います。
また、人間は生身の身体で生きているのですから、毎日どこも快適
です、ということは稀で、何かその人なりの症状があるものです。
西洋医学における治療は、薬物治療の場合、毒をもって毒を制する
訳ですから、副作用は必ずあります。
また、外科的治療でも、「身体髪膚これ父母に受く」と小学にあり
ますし、神様が創った、とも言われていますが、身体の何ひとつ
不要なものはありません。
それを切除するのは、生命を維持するための緊急処置です。
それでも、治療が必要か、信頼できる医師とInformed consent を
的確にとって、確実な診断と、必要かつ十分な治療が受けられるよう
日頃からフォームドクターを作っておくとか、医学や治療法や薬物の
基礎知識を医師の説明が理解できる程度に知っておくべきだと思い
ます。
医は算術などと言う、悪徳医師も下記に記したようにいますが、
べトナム戦争の際に、戦地に向かう兵士は全員盲腸を摘出したそう
ですが、その際、執刀医師が手術不可能なほど、苦しんだ例が報告
されています。
理由は、本当に盲腸で苦しんでいる患者なら一所懸命手術しますが
悪くも無い盲腸を戦争のために摘出することには、深層心理での
抵抗があったようです。
それほど、医師を目指し勉学には励まれた方も多いのですから、
信頼できる医師を、ホームドクターにすることが最適だと思います
お話しが、混乱してすみませんが、時間は貴重なので、付記します。
昨年4月10日にオランダで国家として世界最初に安楽死法案が成立
しました。
ヨーロッパの多くの国では、同様の傾向があります。
その根底には、ホームドクター制度があるように思います。
つまり、家族同様のお付き合いをして、いろんな悩みや苦痛を知って
いるホームドクターは、不治の病で苦しんでいる患者さんに対して
無益と思われる、病との闘いを終わらせてあげたい、と家族同様の
気持ちで思うのでしょう。
安楽死がよいかどうかは別にしても、そこまで親身に、的確に診断
治療しているヨーロッパの現状は、日本にはうらやましいことです
折りしも、小泉総理は、医療費の本人自己負担金を、現行の2割から
3割に強行採決しようと、しています。
これは、日本の医療の根本的な問題に眼をつぶり、国家の収入を
図ろうとするものですが、これは医療のためにも、日本の経済・財政
危機にとっても、非常に好ましく無い、誤った措置です。
ヨーロッパのホームドクター制度を研究してみてください。
国によって多少の違いはありますが、定額制があります。
各医師は担当地域があります。
その地域の住民の健康管理がホームドクターの仕事です。
報酬は定額ですから、無駄で過度な診療・治療はしません。
必要があれば、地域のもっと大きな病院へ入院するよう勧めます。
このようなシステムが、医療費の無駄に歯止めをかけたのです。
日本は、構造改革とは名ばかりで、全く改革の意思が見えません。
問題を見極め、本当の改革を図る、そのひとつの好例が欧州のこの
制度です。小泉総理は権益の保全にばかりしてないで国民のために
頑張ろうとは思わないのか、思うはずも無いのです。
健康保険自己負担3割のするのは自民党でさえ反対でした、それを
強行するのは、国民のことなんか何も考えに無い証拠です。
医療システムの無駄を改善して、所得に見合った負担にするのが
民主主義です。
小泉氏の思想は「帝国主義」「全体主義=ファシズム」です。
戦争に近づいています、自分の命が尽きる時、小泉氏を呪っても
遅いのです。今、反対しましょう。今、立ち上がりましょう。
国民の負担を、これ以上増やしても、景気は悪くなるだけです。
皆さんも、消費税やいろんな小泉悪政で、お分かりでしょう。
田中真紀子外務大臣更迭で、支持率が急落したら、支持率なんて全く
気にしていない、などど言う総理こそ、一刻も早く更迭しましょう。
医療は1個人の問題でもありますが、財政的に日本の重要な問題です。
いろんな意味で、医療を見つめなおしては、いかがでしょう。
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■富士見産婦人科 元理事長らに賠償命令
以下、産経新聞より転記します。[99.07.01 産経新聞]
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5億1000万円 乱診乱療を認定
東京地裁国などへの請求は棄却
昭和五十五年に発覚した埼玉県所沢市の医療法人芙蓉会富士見
産婦人科病院(閉院)の乱診乱療事件で、元患者ら約六十人が
「不要な手術で子宮や卵巣を摘出された」として、病院や国、県
を相手に総額約十四億四千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が
三十日、東京地裁であった。
伊藤剛裁判長は病院側の「共同不法行為による乱診乱療」を認定、
芙蓉会と北野早苗・元理事長(七四)、妻の千賀子・元院長(七三)ら
医師六人に総額約五億一千万円の賠償を命じた。
第一次提訴から約十八年を経て、民事訴訟判決でようやく
「病院ぐるみの違法手術」と認定された。
国と県への請求は、「乱診乱療は予見できなかった」として棄却
された。
判決は早苗元理事長について、「医師ではないのに診療を牛耳り、
診療録すら読めない乏しい知識に基づき不必要な手術の多用を決定
した」と厳しく指摘。
手術をした千賀子元院長ら医師についても、
「早苗元理事長が決定した乱診乱療態勢に、全員が何ら異を唱える
ことなく追随した」と
判断し、「(民法上の)共同不法行為の成立が十分に認められる」と
病院ぐるみの不法行為を認めた。
原告側が「乱診乱療を放置した」と訴えた国と県の行政責任につい
ては、
「病院の悪い風評と同時に、多くの患者には被害意識がなく、早苗
元理事長が逮捕されるまで調査に協力してもらえなかった」とし、
「大勢の医師が集団的に関与した異様な乱診乱療の実態まで認識は
できなかった」として賠償請求を退けた。
判決によると、病院側は昭和四十九年から五十五年にかけ、医師
資格のない早苗元理事長が患者に超音波検査を実施し、
「子宮筋腫(きんしゅ)、卵巣のう腫だ」
「早く手術しないと命が危ない」などと、でたらめな診断をし、
千賀子元院長ら同病院の医師が子宮や卵巣の全摘出など不必要な
手術をした。
この事件では、傷害罪での刑事告訴が捜査当局から不起訴とされた。
このため、被害者側が昭和五十六年、乱診乱療の「医療犯罪」を
訴えて一次提訴した後、六十二年まで三次にわたって提訴された。
原告の元患者の女性は手術時で二十三歳から四十九歳。
慰謝料請求額は一人につき百万円から四千万円。
手術を受け、子供ができなくなったり、頭痛やめまいなどの後遺症
に悩んでいるという。
【富士見産婦人科事件】昭和五十五年九月、当時埼玉県所沢市に
あった富士見産婦人科病院の
北野早苗元理事長が医師法違反容疑で逮捕され、患者から
「手術で正常な子宮を取られた」との訴えが相次いだ。
患者らは元理事長らを傷害容疑で告訴。
埼玉県警は医師二人を同容疑で書類送検したが、浦和地検は
「治療目的でなかったとするには証拠不十分」として不起訴処分に
した。
元理事長と妻の元院長の二人は医師法違反(無資格診療)などの罪で
起訴され、有罪判決が確定。
患者らは五十六年、「事件の全容解明が必要」として民事訴訟を
起こした。
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以上です。