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4-2.トヨタの方式



(1999.08.20)

 前のページの“SONYの法則”のような好業績企業の秘密ということがテーマの本です。
同じ著者のです。
片山修著“トヨタの方式”小学館文庫(文庫ですが書き下し)です。

 詳細は本書をご覧いただくとして、ぼくの感動をお知らせいたします。
 ぼくのこのほーむぺーじの表紙でもお知らせしていますように、地球環境問題はとても
深刻ですが、トヨタはそれさえも、見据えた、R&Dを行い、既に実績もあげています。
 真の優良企業がどんなものか、が、いまあきらかになります。
業績が良いとか、株価が高いとか、それらは一時的だったり、ある程度操作できるものです。
株主総会の前に株価が上がるのはご承知のとおりですから。

 真の優良企業とは、現在も将来も安定した活動ができる、ということだと思います。
あたり前のことですが、経済危機になって初めて実態が明るみになるというのは、
まるで普段は温厚な人が、事件やトラブルに直面して、まるで人が違った様に、廻りが
驚くなんてことが、みなさんも経験があると思いますが、それと似ていますね。

 トヨタは一般に、日本的企業の典型のように思われていますが、それでは好業績に
つながりません。
トヨタはブラックボックスだとも言われてましたが、やはり世界最先端を行くだけの
ことをしていたのです。
オイルショックや、円高の経験を、生かすかどうかが、今回のバブル後の経済危機を
如何に克服しているかの違いになっています。
努力しない人間に成長がないように、自己保身にだけ走る人材の企業には、将来の為の
血を流すような努力は、期待できません。
 また業績の改善を固定費の削減という古典的手段に頼り、固定費に占めるウェイトの
大きな人件費の削減だけを行い、護送船団舵取り総理が日本経済を急速に改善して
くれるのを待つだけの企業は生き残れないでしょう。

 トヨタは、以上の点について、すべてちがっています。
 本文に、こんな記載があります。1992年入社の女性の方ですが、入社1年目から
取締役に会いにいった、そうです。
これはCMやPRに使うようなお話しや、お食事会でもありません。
実際に担当している業務の案件について相談に行った、ということです。

 トヨタ生産システムは有名ですが、ほかにも自己研鑚休暇制度、
カジュアル・デー、自己啓発支援プログラム裁量労働制など、おおかたの日本企業が
行っている諸制度ですが、本質的に違うのです。そこが本物と、摸倣の違いなんですね。
 トヨタは社員を解雇しないことでも有名なように、全てが同じ名前の制度でも、
まったく別物です。女性が妊娠、出産にあたっても、高齢者が加齢により労働が
きつくなっても、楽に作業のできる環境の整備などです。
 『企業は人なり』の言葉のように、佐吉さんの教えは五か条の豊田綱領と
なって生きつづけています。
固定費削減のために、リストラを行い社員の士気を阻害しては、なんにもならない
どころか、逆効果です。
それは誰でもわかっているのでしょうけれど、わかりきったことが、言えるか、
出来るか、が業績の違いです。

 トヨタはGMとの合弁事業などで国際化の真髄を吸収しています。何千人もの
社員が海外で米国人の部下を評価してきました。
その経験をもとに、実のある改革を実現しています。

 トヨタを自動車製造業だと思ったら、既に時代遅れです。
プリウスを既に発売しているように、R&Dではずっと先を行っていますし、
既にITSを基盤に、カー・インテレジェンス、カー・マルチメディア、
ファシリティス、ロジスティス、トランスポート、、トヨタは既に、
自動車メーカーではなくなっています。

 創業62年で、オーナー企業でなく、真の実力主義に徹している点も、
実力の秘密でしょう。
 今年(1999年)中に、ニューヨークとロンドン証券取引所への上場を
予定していますが、国際的企業が未だだったの、と思うほどですが、
奥田会長は本書の中で、ディスクロージャーを行い、資本の国際化、経営者の
国際化など、トヨタの国際化はまだ、端緒についたばかりです。
と述べています。
 真の国際化を推進しているからこそ、でてくる言葉だと思いました。

 多くを語る企業や、個人はたくさんいますが、結果が如実に示しています。
最新の会社四季報で、トヨタは連結増益、とありますが、かつてトヨタと
首位を競いあった某企業は、赤字拡大・外資の支援仰ぐ、ですね。

 企業活動は、ビル・ゲイツ氏の巨額の寄付のように、社会的に大きな貢献を
伴います。欧米の個人や企業は報酬を求めない寄付を、とてもたくさん
しています。
それらは貧しい人に高等教育を与え、ベンチャー企業に未来を与えています。
そして社会の未来を創っているのです。
自分の財産の半分を寄付する、ぼくにできるでしょうか?
エンゲル係数が50%以下だからできない?では日本は心配です。
諸外国は明日の食事の糧も無い人たちが、寄付をしています。
信じられますか?本当です。

 映画“ブラザーサン・シスタームーン”はアッシジのフランシスコが
主人公の映画ですが、フランシスコは有名な“平和の祈り”の一節で、

 われらは自ら与うるがゆえに受け、赦すがゆえに赦され、、
と言っています。

 日本人も助け合いましょう、期待してはいけないことですが、それは
自分の為になります。
そうしなければ日本人は、諸外国から見捨てられ、国内でも殺伐とした
社会になりそうで、とても心配です。
 ぼくの別のページ、1−2タイタニック考でも書きましたが、等級別生存率の
ことですが、思いやりの心を持たなければ、日本の未来は心配です。

 情けは人の為ならず。という諺を、情けを人にかけることは、その人の為に
ならないんだ、という意味に誤解されている方が、けっこういますが、そんな
誤解がまったく無くなくならなければ、日本の夜明けは遠いと思います。

 ビジネス書で泣いた、なんて恥ずかしいような気もしますが、それほど
感動した1冊です。


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