特別鑑賞ツアー感想
名古屋YWCA合同鑑賞ツアー・大レンブラント展



大レンブラント展に参加して
寺下雅子(元宇都宮美術館学芸員)
 12月12日、京都国立近代美術館で開催されていた「大レンブラント展」を鑑賞する、ミュージアムアクセスビュー、名古屋YWCAの皆さんとの合同ツアーに御一緒することができました。
 タイトルが示す通りの大規模な展覧会で、ツアー当日は平日の午前中であったにもかかわらず、会場は大勢の来館者で賑わっていました。門を入った時点から既に混雑が始まっていたので、「きっと中はすごいことになっているのでは」と予想しながら展示室に向かいました。
 他の美術館、博物館に行ってもそうなのですが、私はもともとの職業柄、どうしても展示する側の見方にもなってしまい、純粋に作品世界に入って行けないことがしばしばあります。つまり、展示室の明るさは適当か、温度は、湿度は、照明の当て方にどんな工夫をしているか、作品と作品の間隔はどれくらいか、展示位置の高さは何センチか、動線をどのように作っているか、ゆったりと鑑賞できるか、ガラスの反射光が強くないかなど、美術館の中で作品を取り巻く環境を注視してしまうのです。と同時に、視覚障害のある方への配慮はなされているかどうかについて非常に気になります。
作品の保護と鑑賞のしやすさは時には相反することもあり、そのジレンマに、うーんと考えこむこともあります。今回、展示室は作品保護のため暗めで、展示スペースに比較的余裕のある部屋と、そうではない部屋との両方でした。
 予想通り、展示室は非常に混雑していました。こういった極度の混雑時にお互いが対話をしながらじっくり気持ち良く鑑賞するには難しい点もありますが、もう既にメンバーの皆さんが心得ていらっしゃる通り、ガイドする側が人の流れを読んで動線や立ち位置を工夫し、声のトーンを押さえめにするなど、臨機応変にコーディネイトするのが適切な方法だと思います。今後は美術館や他の来館者にも理解が広まることを願います。
 多くの作品を早足で鑑賞するより、点数を絞って一点一点じっくり鑑賞する。これはメンバーの皆さんが既に実践されている方法だと思いますが、今回のような膨大な作品数の中から幾つかの作品をピックアップするのは大変な作業だったと思います。
特に今回は肖像画が大部分を占めていたので、取捨選択は非常に難しかったと思いますが、メンバーの方がじっくり考えられ、事前に調査されていたということで(私は事前に予習をせずに臨んでしまったので反省しています)、要注目作品を含めバリエーション豊かに作品を選んでおられました。幾つかの対象作品には点図も用意されていて、とても効果的なサポートだったと思います。点図と対話を通して鑑賞していくうちに、遠近法、群像表現など、画面の複雑な要素についての的確な説明の仕方、点図に盛り込む情報量はどれくらいがいいのかなど、鑑賞方法について今後検討していけそうな幾つかのテーマが見つかりました。これらについては私も勉強していきた いと思いました。
 とても楽しいツアーで、時間は瞬く間に過ぎてしまいました。メンバーの皆さん、どうもありがとうございました。
 最後に、これは自分自身への問いかけなのですが、自分はなぜ美術が好きなのか、なぜ他の人にも伝えたいと思ったのか、主観的になり過ぎるのはいけませんが、原点に戻って考えることが大切かもしれない思いました。

これまでの鑑賞ツアー「大レンブラント展」を参考にしてください。

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