あべこずえ報告──
アートリンク・プロジェクトは、障害のある人と若手のアーティストが組みになり、お互いの感性や創造性を刺激しながら、共同で作品制作をするというもの。
8組のペアが、昨年の秋から、2月の展覧会にむけての制作を行っていました。
ビューでは、視覚障害のある白井翔さんとアーティストのアマカワユイさんの作品制作のサポートを行ってきました。
そして、せっかくだから、この展覧会の鑑賞ツアーを行おうと、急きょ決定(いつものことだけれども・・)。あわてての募集のため、今回はプチツアーになりました。
少ないメンバーで、初めての方もいらしたけれども、ゆっくりとしゃべりながら、なごやかな雰囲気で進められました。
出展者の白井さんと高橋夏樹さんにも参加していただきました。高橋夏樹さんは、滋賀在住の障害のある人とペアで作品を制作されたアーティストです。
会場は、ナカマチ商店街を中心に、ギャラリーや公共施設など4会場。
私たちは、ゆっくり見てまわったので、そのうちの3会場、大津祭曳山展示館・ギャラリー蔵・実験空間with YUKIを訪ねました。
最初は、大津祭曳山展示館へ。ここでは、今回一番の目的であった、白井翔さんとアマカワユイさんの作品が展示されています。
小さめのキャンバス10点に2人の「湖」の世界が描かれています。絵の具やビーズ、モデリングペースト、和紙、ホットボンドなど、触って確かめられる素材が使われていて、とても繊細で詩的な記憶の中の湖が描かれていました。
もちろん、白井さんにギャラリートークを行ってもらいました。制作時の大変だったこと、色や展示へのこだわり、タイトルの付け方など話していただき、ますます作品への鑑賞が深まりました。
|
白井さんの アーティストトーク |
白井さん&アマカワさんの アートリンク作品 | |
他のアートリンク作品を鑑賞 |
ツアー参加者みんな揃って
| |
次に、全員で、ギャラリー蔵へ移動。
ここは、一組の作品が展示されています。暗い部屋を入っていくと、床から20センチぐらいのところにパネルの台があり、そこに電球をさかさまにした形のものに、いろんな人物の顔が描かれているものがランダムに置かれています。人物は異国の人のよう。
作品を映す鏡がいびつな広がりを見せ、クリスマス飾りのようなチープな電球が、にぎやかで、はかない移動遊園地のような雰囲気で、幻想的な空間でした。
大勢で見ると、いろんな解釈が聴けるので、今回のように全員で鑑賞するのも良かったな、と思いました。
最後に実験空間with YUKIというギャラリー会場へ移動。
古い大きなお家で、住居の他にギャラリースペースとして開放されている場所でした。
入り口のところに、1メートルほどの大きなオブジェが2体。猿のような愛嬌たっぷりのものとイソギンチャクのような不思議植物。見た目はかわいくポップなオブジェですが、素材がザラザラしたあたたかい風合いなのが不思議。
壊れやすいので、触ったらダメだと言われているのに触っている人がいましたが、気持ちはわかります! 材料は、土壁で作られたものだと聞いて納得しました。
奥に入っていくと、母屋と離れがあって、庭をぬけて離れにいきます。離れは大きな縁側があってそこを上がると、16畳ほどの和室が展示空間となっていました。
ここは、今回参加してくださっている高橋夏樹さんがペアになってつくった作品の展示場です。
|
|
|
黒く鉄のようなかたまりの、モコモコと意志を持ち、増殖していくような不思議なカタチの作品が10点ほど、畳の上や床の間、縁側などに設置されています。
高橋さんにもギャラリートークをしていただきました。
作品は、粘土を使ってつくり、それから樹脂で型をとって作ったもの。見た目は重そうですが、なんととても軽いと聞いて驚きました。
ペアの冨士川義晃さんは、ほとんど言葉を持たない障害のある方で、彼の制作への勢いや集中力、作ることへの喜びを感じたということなどを聞かせていただき、相手の気持ちを尊重されて制作された様子が伺えました。
いろいろなカタチがあるので、1点1点ゆっくりと触って、いろんな感想を話し合いながら鑑賞することができました。 |
|
| |
さて、鑑賞も終わる頃、なんだかいい匂いがしてきました。ギャラリーの方が来られて、隣の部屋でお茶を用意していますとのこと。(匂いのもとは、チーズケーキ!)
喫茶店へ移動しようとしたいところだったので、お言葉に甘えてお茶とケーキをいただきなら、感想会をさせてもらうことにしました。
感想で多かった意見は、作り手の話が聞けてよかったとということでした。
また、見える参加者からは、触って鑑賞した作品で、視覚障害のある人の感想がとても新鮮だった、という意見もありました。
最後に白井さんから、「こういう経験は初めてなので緊張した。ビューでサポートしてくれた人や、アマカワさんに感謝しています」という言葉をいただきました。こちらこそ、いい作品を見せていただいてありがとうございます!そして、お疲れさまです。
今回の鑑賞ツアーは、作り手側の話を聞かせていただくことによって、作品を身近に鑑賞することができました。
作品も、作り手の個性が引き出されているのを感じることができ、こういう作品作りもあるのだな、と勉強になりました。
今後は、美術館だけでなく、ギャラリーで作家さんにもまじっても らっての鑑賞ツアーも考えていきたいです。
|