「―――服。」
「え?」
気まずい沈黙を破る、アスランの声。
多分、アスランなりの気遣いだったのだろうが、ずっと気が張っていたためか
キラの返事はずいぶんと間の抜けたものになってしまった。
振り向いたアスランが溜め息をつく。
「目立つんだ。とりあえず何か着替えるものを。」
「あぁ。そうか。」

まだ、軍服のままだった。
改めて自分たちの姿を見ると、なんとも奇妙な感じがする。
そして、それを感じるのは自分たちだけではないらしく、
道行く人々も奇異な視線を投げかけていた。

連合と、ザフト。対照的な赤と青。
それは二人が敵対していた証でもあり、
また、二人が一緒にいることの異常性を示してもいる。

「早く脱いでしまいたい。」
キラは誰にともなく言った。
かみ締めたキラの唇がギリと音を立てる。
アスランは何ともいえない複雑な表情でそれを見て、ただコクリと頷いた。



「―――っ!」
暫く歩いた四つ角で、突然アスランの表情に緊張が走った。
「マズイな。」
「うん。」
目立つのもまずいが何より、後ろに二人。
不自然に自分達を追う様な動きを見せる者達に眉をしかめ、アスランは言った。
「また追っ手か?」
「わからない。」
「地球軍か、ザフトか。」
「オーブの警備隊―――だったり?」
「……その可能性もあったんだな。」
「というか、民間の人たちから見て、僕らの格好って明らかに不審だし。」
もう、通報されているかもしれない。
下手を打つとオーブの軍隊にすら追われる可能性があることを失念していた。

しばらく顎に手を当てて考え込んだ後、ここで考えていても仕方がないと思ったのか、
アスランがキラの手を引いた。
「キラ、来いっ!」
「言われなくてもっ! こんなトコで捕まるなんて冗談じゃない。」
言うなり、二人は駆け出した。

賑やかな通りの中、足音は道行く人々のそれに混じって消える。
注意せねばならないことが一つでも減るのだ。
……それだけでも有難い事だった。

さらに、複雑に入り混じる街道を走る二人の空間認識能力はかなり高い。
前後左右はおろか、上も下もないような宇宙であれだけの戦闘を繰り広げていたのだ。
東西南北しかない平面で追っ手を撒く事などに苦労はいらない。

キラとアスランはあっという間に相手を撒いて目当ての服屋へと入っていった。





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