「君が僕の事をどう思っていようと、僕は君を友達だって思ってる。」


今さらって思われても、



「親友だって思ってるんだ。」



「キラ……」

アスランは口元を手で覆った。

思ってもみない言葉だった。
かつて、ナチュラルの友達を選んだキラ。
キラ・ヤマトの親友であるアスラン・ザラは、あの時死んだのだと思っていた。

しかし、キラは自分を友達だと言った。
それどころか親友だとさえ言ってのけたのだ。

「ねぇ、アスラン。……君にとっても僕は、裏切り者だった?」

名前を呼んだきり、何も言わないアスランを見て、キラは悲しそうに笑った。

「そんなことっ!」

そんな事あるものか。

キラと戦わなければならなくなって、自分がどれだけ苦しんだか……。
母を失い、復讐の炎に身を焦がし
……そんな日々の中で崩れることなく生きて来れたのは、キラとの思い出があったから。
苦しい戦いの先には、きっとまたあの温かい日々が続いているものだと信じていたからだ。

それなのに、もう再会した時には敵同士で、戦うしかなかった自分達。

潰えていく希望。
信念の根本を揺るがされる恐怖に、何度命を絶とうと思ったか知れない。
けれど、それをそんなアスランを止まらせたのも、やはり、キラと過ごした幼い頃の思い出だったのだ。
手首に食い込ませた刃に力を込めることができなかったのは、心のどこかにまだ帰りたいと思う気持ちがあったから。

日を追うごとに激しくなっていく戦い。
それでも思い出は消えることなく、アスランの拠り所であり続けた。





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