伊東静雄「反響」
小さな手帖から


    中心に燃える

 
 中心に燃える一本の蝋燭の火照に
 
 めぐりつづける廻燈籠
 
 蒼い光とほのあかい影とのみだれが
              ころも
 眺め入る眸 衣 くらい緑に
 
 ちらばる囘歸の輪を描く
       みづか
 そして自ら燃えることのほかには不思議な無關心さで
 
 闇とひとの夢幻をはなれて
 
 蝋燭はひとり燃える




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