伊東静雄「反響」
わが家はいよいよ小さし
なかぞらのいづこより
なかぞらのいづこより吹きくる風ならむ
いへ
わが家の屋根もひかりをらむ
うしほ
ひそやかに音變ふるひねもすの風の潮や
しよ
春寒むのひゆる書齋に 書よむにあらず
物かくとにもあらず
新しき戀や得たるとふる妻の獨り異しむ
思ひみよ 氷れる岩の谷間をはなれたる
こ ぞ
去年の朽葉は春の水ふくるる川に浮びて
き ん
いまかろき黄金のごとからむ
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