伊東静雄「反響」
凝視と陶醉


    早春

             あは
 野は褐色と淡い紫、
       たんぼ                        ぬ る
      田圃の上の空氣はかすかに微温い。
     ど こ
    何處から春の鳥は戻る?
  
  つよい目と
     
     單純な魂と いつわたしに來る?
 

 
 未だ小川は唄ひ出さぬ、
      
      が 流れはときどきチカチカ光る。
           ぎよりん
    それは魚鱗?
  
  なんだかわたしは浮ぶ氣がする、
                      う
     けれど、さて何を享ける?




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