北原白秋
「思ひ出」より
時は逝く
ゆ ふなばら
時は逝く。赤き蒸汽の船腹の過ぎゆくごとく、
こくぐら
穀倉の夕日のほめき、
みみなり
黒猫の美くしき耳鳴のごと、
い つ か げ
時は逝く。何時しらず、柔かに陰影してぞゆく。
時は逝く。赤き蒸汽の船腹の過ぎゆくごとく。
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