萩原朔太郎
『月に吠える』より

  
  雲雀料理


 
ささげまつるゆふべの愛餐、
 
燭に魚蝋のうれひを薫じ、
 
いとしがりみどりの窓をひらきなむ。
 
あはれあれみ空をみれば、
 
さつきはるばると流るるものを、
 
手にわれ雲雀の皿をささげ、
 
いとしがり君がひだりにすすみなむ。