萩原朔太郎
『月に吠える』より

  
  およぐひと


 
およぐひとのからだはななめにのびる、
 
二本の手はながくそろへてひきのばされる、
             こころ
およぐひとの心臓はくらげのやうにすきとほる、
             め
およぐひとの瞳はつりがねのひびきをききつつ、
                      みづ        つき
およぐひとのたましひは水のうへの月をみる。