萩原朔太郎
『月に吠える』より

  
  麥畑の一隅にて


 
まつ正直の心をもつて、
 
わたくしどもは話がしたい、
 
信仰からきたるものは、
 
すべて幽靈のかたちで視える、
 
かつてわたくしが視たところのものを、
 
はつきりと汝にもきかせたい、
 
およそこの類のものは、
 
さかんに装束せる、
 
光れる、
 
おほいなるかくしどころをもつた神の半身であつた。