萩原朔太郎
『月に吠える』より

  
  贈物にそへて


 
兵隊どもの列の中には、
 
性分のわるいものが居たので、
 
たぶん標的の圖星をはづした。
 
銃殺された男が、
 
夢のなかで息をふきかへしたときに、
 
空にはさみしいなみだがながれてゐた。
 
『これはさういふ種類の煙草です』