石川啄木

詩六章

  
  三 手 紙

             あ
 「もう十年も逢はないが、
 
 君はやつぱり昔どほり
 
 元気が盛んだらう。」と
 
 その手紙に書いてあつた。――

          は い
 湯にでも這入らうかと
 
 それ一つを望みに、
 
 ぐつたり疲れて帰つた時、
 
 机の上に載つてゐた
 
 昔の友の手紙に。




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