石川啄木

詩六章

  
  二 口 笛

 
 少年の口笛の気がるさよ、
 
 なつかしさよ。
  あおぬり            は
 青塗の自動車の走せ過ぎたあとの
                  む
 石油のにほひに噎せて、
             おもて そむ
 とある町角に面を背けた時、
 わたし  ふりかえ
 私を振回つて行つた
            がいとう
 金ボタンの外套の
 
 少年の口笛の気がるさよ、
 
 なつかしさよ。




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