石川啄木

「呼子と口笛」補遺

  
  一

 
暗き、暗き曠野にも似たる
 
わが頭脳の中に、
        いなづま
時として、電のほとばしる如く、
 
革命の思想はひらめけども――

 
あはれ、あはれ、
                    つい
かの壮快なる雷鳴は遂に聞え来らず。

 
我は知る、
 
その電に照し出さるる
 
新しき世界の姿を。
 
其処にては、物みなそのところを得べし。

 
されど、そは常に一瞬にして消え去るなり、
 
しかして、この壮快なる雷鳴は遂に聞え来らず。

 
暗き、暗き曠野にも似たる
 
わが頭脳の中に
 
時として、電のほとばしる如く、
 
革命の思想はひらめけども――

(一九一一・六・一五夜)



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