あざみ
薊の花のすきな子に
やす
I 憩らひ
――薊のすきな子に――
風は 或るとき流れて行った
絵のやうな うすい緑のなかを、
ひとつのたつたひとつの人の言葉を
はこんで行くと 人は誰でもうけとつた
ありがたうと ほほゑみながら。
開きかけた花のあひだに
色をかへない青い空に
鐘の歌に溢れ 風は澄んでゐた、
気づかはしげな恥らひが、
そのまはりを かろい翼で
にほひながら 羽ばたいてゐた……
何もかも あやまちはなかつた
かりうど
みな 猟人も盗人もゐなかつた
ひろい風と光の万物の世界であつた。
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