薊の花のすきな子に
II 虹の輪
かを
あたたかい香りがみちて 空から
てのひら
花を播き散らす少女の天使の掌が
雲のやうにやはらかに 覗いてゐた
もた
おまへは僕に凭れかかりうつとりとそれを眺めてゐた
夜が来ても 小鳥がうたひ 朝が来れば
くさむら
叢 に露の雫が光つて見えた――真珠や
はがね
滑らかな小石の刃金の叢に ふたりは
やさしい樹木のやうに腕をからませ をののいてゐた
吹きすぎる風の ほほゑみに 撫でて行く
朝のしめつたその風の……さうして
ひとひ
一日が明けて行つた 暮れて行つた
おまへの瞳は僕の瞳をうつし そのなかに
もつと遠くの深い空や昼でも見える星のちらつきが
こころよく こよない調べを奏でくりかへしてゐた
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