立原道造「優しき歌 II


 
 II 落葉林で


 
あのやうに
 
あの雲が 赤く
 
光のなかで
 
死に絶えて行つた

          もた
私は 身を凭せてゐる
 
おまへは だまつて 脊を向けてゐる
 
ごらん かへりおくれた
 
鳥が一羽 低く飛んでゐる

 
私らに 一日が
 
はてしなく 長かつたやうに

 
雲に 鳥に
 
そして あの夕ぐれの花たちに

 
私らの 短いいのちが
 
どれだけ ねたましく おもへるだらうか