立原道造「優しき歌 II


 
 VII また昼に


 
僕はもう はるかな青空やながれさる浮雲のことを
 
うたはないだらう……
 
昼の 白い光のなかで
 
おまへは 僕のかたはらに立つてゐる

 
花でなく 小鳥でなく
 
かぎりない おまへの愛を
 
信じたなら それでよい
 
僕は おまへを 見つめるばかりだ

 
いつまでも さうして ほほゑんでゐるがいい
 
老いた旅人や 夜 はるかな昔を どうして
 
うたふことがあらう おまへのために

 
さへぎるものもない 光のなかで
 
おまへは 僕は 生きてゐる
 
ここがすべてだ! ……僕らのせまい身のまはりに