中原中也「山羊の歌」


    
   凄じき黄昏


 
捲き起る、風も物憂き頃ながら、
    なび
草は靡きぬ、我はみぬ、
とほ      はやと
遐き昔の隼人等を。

ぎんがみ
銀紙色の竹槍の、
みぎは
汀に沿ひて、つづきけり。
     ざ こ       たの
――雑魚の心を俟みつつ。

 
吹く風誘はず、地の上の
        かばね
敷きある屍――
 
空、演壇に立ちあがる。

            ばいしん
家々は、賢き陪臣、
 
ニコチンに、汚れたる歯を押匿す。