中原中也「山羊の歌」


    
   春の思ひ出


 
摘み溜めしれんげの華を
   ゆふげ
  夕餉に帰る時刻となれば
            ぼあい
立迷ふ春の暮靄の
            へ
    土の上に叩きつけ

 
いまひとたびは未練で眺め
 
  さりげなく手を拍きつつ
     へ
路の上を走りてくれば
 
    (暮れのこる空よ!)

 
わが家へと入りてみれば
 
  なごやかにうちまじりつつ
 
秋の日の夕陽の丘か炊煙か
             くる
    われを暈めかすもののあり

                       やかた
      古き代の富みし館の
 
          カドリール ゆらゆるスカーツ
 
          カドリール ゆらゆるスカーツ
 
      何時の日か絶えんとはする カドリール!