中原中也「山羊の歌」
秋の夜空
これはまあ、おにぎはしい、
みんなてんでなことをいふ
それでもつれぬみやびさよ
いづれ揃つて夫人たち。
下界は秋の夜といふに
上天界のにぎはしさ。
ゆか
すべすべしてゐる床の上、
つ
金のカンテラ点いてゐる。
す そ
小さな頭、長い裳裾、
椅子は一つもないのです。
下界は秋の夜といふに
上天界のあかるさよ。
ほんのりあかるい上天界
とほ
遐き昔の影祭、
しづかなしづかな賑はしさ
よる
上天界の夜の宴。
私は下界で見てゐたが、
知らないあひだに退散した。
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