電解コンデンサーの寿命と液漏れ:
電解コンデンサーの寿命については使用温度によって大幅に変わります。
電解コンデンサーの寿命は、次式で表せます。
ここで、
L=期待寿命
T=コンデンサの温度(周囲温度+発熱)
Lo=そのコンデンサの保証寿命(規格)
To=そのコンデンサの最高使用温度(規格)
例えば、85℃2000h品を、周囲温度40度で使用した場合 40,000時間の期待寿命になります。これは、毎週15時間使用したとしても、50年間はもつことになります。
毎日8時間使用すると、15年になります。
ここで寿命がくると、すぐに不良になるわけではありません。寿命後は徐々に故障率が高くなっていきます。
なお、フィルムコンデンサには、寿命という概念も基本的にはありません。
四級塩電解液使用電解コンデンサの液漏れ事故が起こりました。1990年前後に製造された高性能電解コンデンサには、四級塩電解液が使われました。この電解液は非常に性能が良いので、主に105℃、低ESRなどの高性能コンデンサに使われました(85℃品の一部でも使用)。メーカーもニチコン、日本ケミコン、松下電器、エルナーなどほとんどです。100%液漏れが起こり、大型コンデンサの場合、その液により基板を腐食させ、最悪、発煙事故になります。
四級塩電解液は、非常にアルカリ性が強く、さらに使用中にわずかながらの電気分解により、陰極側に発生する強アルカリ成分が封口材のゴム・端子丸棒部を侵食して、コンデンサの気密性が損なわれ、液漏れに至ります。
コンデンサ・メーカーは製造開始後4年ほどで、このメカニズムに気づき、ただちに使用を中止しましたが、あまりに製造量が多かったため、大々的なリコールは行わずに済ませました。しかし、必ず液漏れを起こすので、業界では周知の事実となり、故障による影響の大きい機器については、定期点検、オーバーホールの機会に対策品に交換しました。
1987年頃から、105℃低インピーダンス品に四級塩電解液を使用開始。
1992年9月頃から電解液漏れが顕著化。
1993年始に対応開始。(封口ゴムを樹脂硫流プチルゴムへ変更)
1994年末まで生産。
1996年2月から切り替えを推奨。
ニチコン 主な四級塩コンデンサの製造時期::
チップ WX 85℃ 50V以下 1987/08〜1994/11
チップ UX 105℃ 50V以下 1989/01〜1997/10
高信頼 PF 105℃ 50V以下 1987/08〜1998/9
(コンデンサの製造時期と、それを組み込んだ製品の製造時期とは、づれますから要注意)
エルナー RSH,RSG,RSE,RC2S,RC3Sシリーズで使用
日本ケミコン LXF,TXF,SXE,SXG,MVK,MFK,MVF,MFFシリーズで使用
ニチコン RZ,RT,VZ,ET,PR,PY,PF,PL,PQ,PG,MX,WX,WP,MP他シリーズで使用
なお、2001年後半〜2002年前半あたりに製造された台湾製低ESR電解コンデンサの液漏れは、四級塩電解液が原因ではありません。ここのサイトに詳しい情報があります。