山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 翼


 
よろこびは翼のやうなものだ
 
よろこぴは人間をたかく空中へたづさへる
                 そら
海のやうな都会の天
 
そこで悠悠と大きなカーヴを描いてゐる一羽の鳶
 
なんといふやすらかさだ
 
それをみあげてゐるひとびと
 
彼等の肩には光る翼がひらひらしてゐる
 
うたがつてはならない
 
彼等はなんにも知らないのだが
 
見えない翼はその踵にもひらひらしてゐる