宇宙の秘密が知りたくなった、と思うと、いつのまにか自分の手
は一塊の土くれをつかんでいた。そうして、ふたつの眼がじいっと
それを見つめていた。
すると、土くれに分子の中から星雲が生まれ、その中から星と太
さんようちゅう
陽とが生まれ、アミーバと三葉虫とアダムとイヴとが生まれ、それ
からこの自分が生まれて来るのをさまざまと見た。
……そうして自分は科学者になった。
しばらくすると、今度は、なんだか急に唄いたくなって来た。
の ど
と、思うと、知らぬ間に自分の咽喉から、ひとりでに大きな声が
出て来た。
その声が自分の耳にはいったと思うと、すぐに、自然に次の声が
出て来た。
声が声を呼び、句が句を誘うた。
そうして、行く雲は軒ばに止まり、山と水とは音をひそめた。
……そうして自分は詩人になった。
(大正九年八月、渋柿)