霊山の岩の中に閉じ込められて、無数の宝石が光り輝いていた。
試みにその中のただ一つを掘り出してこの世の空気にさらすと、
つちくれ
たちまちに色も光も消え褪せた一片の土塊に変わってしまった。
同時に、霊山の岩の中に秘められたすべての宝石も、そのことご
とくが皆ただの土塊に変わってしまった。
私の頭の中には、数限りもない美しい絵が秘蔵されていた。
私は試みに絵筆を取って、その中の一つを画布の上に写してみた。
……気のついた時はもう間に合わなかった。
……同時に頭の中のすべての美しい絵もみんな無残に塗り汚され
てしまった。
そうして私はただのつまらない一画工になってしまった。
(大正九年十月、渋柿)