寺田寅彦『柿の種』
短章 その一




                                          コブラ
 ロンドンの動物園へインドから一匹の傘蛇が届いた。
         だ に
 蛇には壁蝨が一面に取りついていた。
 
 健全な蛇にはこの虫があまりつかないものである。
 
 こんなことが先ごろの週刊タイムスに出ていた。
 
 「この事実にはいろいろのモラールがある」
 
とAが言った。
 
 「さらに多くの詩がある」
 
とBが答えた。
(大正九年十月、渋柿)


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