閑吟集 小歌

 
 よのなか            ささ        え
 世間は霰よなう 笹の葉の上の さらさらさっと 降るよなう
(231)

大意……

世の中は霰だなあ。
笹の葉の上に、さらさらさっと、降っては過ぎるようなものだ


 



 世の中の流行とか、移り変わりの激しさを笹の上の霰(あられ)にたとえた、一種の諦念の歌でしょう。ただ、諦念と言うには「さらさらさっ」が、とても清々しい感じを与えます。「降る」は、「経る」でも「古る」でもいいかもしれません。

 「世間」を「男女の仲」とすれば、「経る」とするのが妥当でしょうか。男と女の間の事なんて、笹の上に降りかかり霰のように、さらさらさっと瞬く間に過ぎ去ってしまうもの、と。49番の歌と、かなり雰囲気が似ていますね。

 ただ、ちょっと思ってみたんですが、確かに「霰」はあっという間にこぼれて落ちて、すぐに消えてしまう物なのでしょうが、霰が当たった「笹の葉」の方は、あっと言う間に過ぎてしまった、で終わるのでしょうか。それなりに「霰」で傷がつくし、痛みもあると思うのですが……。


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