北原白秋
「邪宗門」より 噴水の印象 ふきあげ 噴水のゆるきしたたり。―― その 霧しぶく苑の奥、夕日の光、 水盤の黄なるさざめき、 なべて、いま なげかひ ものあまき嗟嘆の色。 噴水の病めるしたたり。―― びやうじな いづこにか病児啼き、ゆめはしたたる。 くちつけ そこここに接吻の音。 空は、はた、 暮れかかる夏のわななき。 噴水の甘きしたたり。―― きづ ぢよしん そがもとに痍つける女神の瞳。 くるめき はた、赤き眩暈の中、 ひや 冷み入る ふし 銀の節、雲のとどろき。 噴水の暮るるしたたり。―― む くわとぞ蒸す日のおびえ、晩夏のさけび、 ぬ ヒステリイ 濡れ黄ばむ憂鬱症のゆめ 青む、あな、 しとしと夢はしたたる。 |
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