北原白秋
 

「邪宗門」より

  
 青き花




 
 そは暗きみどりの空に
           まぼろし
 むかし見し幻なりき。
 
 青き花
 
 かくてたづねて、
 
 日も知らず、
 
 また、夜を知らず、
 
 国あまた巡りありきし
 
 そのかみの
 
 われや、わかうど。

 
 そののちも人にうとまれて、
  いみじ    く
 微妙くも奇しき幻、
 
 ゆめ、うつつ、
  か
 香こそ忘れね、
 
 かの青き花をたづねて、
 
 ああ、またもわれはあえかに
 
 人の世の
 
 旅路に迷ふ。



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