あしお ふるかわ
足尾の坑夫のおかみさんたちが、古河男爵夫人に面会を求めるた
めに上京した。
「男爵の奥様でも私たちでもやっぱり同じ女だ」といったような
意味のことを揚言したそうである。
僕はこの新開を読んだ時に、そのおかみさんたちの顔がありあり
見えるような気がした。
そうして腹が立った。……
びまん れんが
いくらデモクラシーが世界に瀰漫しても、ルビーと煉瓦の欠けら
とが一つになるか、と、どなりたくなった。……
ヴイナスのアリストクラシーは永遠のものである。
こう言ってQ君が一人で腹を立てている。
(大正十年六月、渋柿)