油画をかいてみる。 正直に実物のとおりの各部分の色を、それらの各部分に相当する 「各部分」に塗ったのでは、できあがった結果の「全体」はさっぱ り実物らしくない。 全体が実物らしく見えるように描くには、「部分」を実物とはち がうように描かなければいけないということこなる。 印象派の起こつたわけが、やっと少しわかって来たような気がす る。 思ったことを如実に言い現わすためには、思ったとおりを言わな いことが必要だという場合もあるかもしれない。 (大正十年七月、渋柿)