寺田寅彦『柿の種』
短章 その一




  ねこ
 猫が居眠りをするということを、つい近ごろ発見した。
 
 その様子が人間の居眠りのさまに実によく似ている。
 
 人間はいくら年を取っても、やはり時々は何かしら発見をする機
 
会はあるものと見える。
 
 これだけけは、心強いことである。
 
(大正十年八月、渋柿)


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