コスモスという草は、一度植える植えると、それから後数年間は、
毎年ひとりで生えて来る。
今年も三、四本出た。
せ た
延ひ延びて、私の脊丈けほどに延びたが、いっこうにまだ花が出
そうにも見えない。
せんたん あり びき
今朝行って見ると、枝の尖端に蟻が二、三疋ずつついていて、何
かしら仕事をしている。
よく見ると、なんだか、つぼみらしいものが少し見えるようであ
る。
コスモスの高さは蟻の身長の数百倍である。
人間に対する数千尺に当たるわけである。
どうして蟻がこの高い高い茎の頂上につぼみのできたことをかぎ
つけるかが不思議である。
(大正十年十一月、渋柿)