かんこうば
シヤトルの観工場でいろいろのみやげ物を買ったついでに、草花
の種を少しばかり求めた。
そのときに、そこの売り子が
「これはあなたにあげましょう。私この花がすきですから」
ほうせんか
と言って、おまけに添えてくれたのが、珍しくもない鳳仙花の種で
あっ一た。
帰って来てまいたこれらのいろいろの種のうちの多くのものは、
てんで発芽もしなかったし、また生えたのでもたいていろくな花は
つけず、一年きりで影も形もなく消えてしまった。
しかし、かの売り子がおまけにくれた鳳仙花だけは、実にみごと
に生長して、そうして鳳仙花とは思われないほどに大きく美しく花
を着けた。
そうしてその花の種は、今でもなお、年々に裏庭の夏から秋へか
けてのながめをにぎわすことになっている。
さ じ
この一些事の中にも、霊魂不滅の問題が隠れているのではないか
という気がする。
(対象十一年十一月、渋柿)