大道で手品をやっているところを、そのうしろの家の二階から見 下ろしていると、あんまり品玉がよく見え過ぎて、ばからしくて見 ていられないそうである。 感心して見物している人たちの方が不思議に見えるそうである。 それもそのはずである。 手品というものが、本来、背後から見下ろす人のためにできた芸 当ではないのだから。 (大正十三年八月、渋柿)