寺田寅彦『柿の種』
短章 その一




 
 三毛の墓

 み け
三毛のお墓に花が散る
 
こんこんこごめの花が散る
 
小窓に島影小鳥影
 
「小鳥の夢でも見ているか」
 

 
三毛のお墓に雪がふる
 
こんこん小窓に雪がふる
こたつぶとん  くれない
炬燵蒲団の紅も
 
「三毛がいないでさびしいな」
 
(昭和三年二月、渋柿)


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